第12回 相続分の確定 ~ 法定相続分

1 相続分とは?

  人が死亡し、相続人が複数いるとして、それぞれの分け前はどのように決まるのでしょうか?
  相続分がどうなるか、という問題です。

  まず、遺言で指定された相続分があればそれに従います(「指定相続分」)。

  それがないならば、民法に定められた「法定相続分」を基本にします。

  さらに、上記の「指定相続分」「法定相続分」に対して、それぞれの事情によって修正(特別受益、寄与分の考慮)を加えて「具体的相続分」が確定されます。

  今回は「法定相続分」について解説します。

 2 法定相続分

(1) 配偶者相続人と法定相続分

  配偶者(夫や妻)は常に相続人となります(民法890条)。

  法定相続分は、他の血族相続人との組み合わせによる。

(2) 血族相続人と法定相続分

① 第1順位の血族相続人-子
(a) 基本
 子のグループ 1/2  配偶者1/2 (民法900条1号)
  
  子が数人あれば同順位で、かつ均等の相続分となります(原則)。

【ケース】
Aが死亡し,相続人は妻Wと,子X・Y・Zである。

法定相続分は
W    (1/2)
X・Y・Z (それぞれ1/2×1/3=1/6)

(b) 嫡出子と婚外子の区別
  婚外子は、嫡出子(婚姻した夫婦の間の子)の1/2の相続分とされています。
      ですから、子が複数いて、婚外子と嫡出子がいる場合は、婚外子の取り分は、嫡出子とくらべると1/2となります。
      これは、憲法の平等原則に違反するのではないか、という点が裁判で争われています。 
       … 最高裁は合憲(平成7年など)としています。
                しかし、これを違憲(憲法違反)であるとする高等裁判所の判決もあり、近い将来、この規定が変わる可能性も十分にあります。

【ケース】
Aが死亡し,相続人は妻W,
嫡出子XならびにAにより
認知された婚外子Dである。



法定相続分は   W (1/2)   配偶者は1/2
X    (1/3)
D    (1/6)
※ 子のグループ(XとD)をあわせて1/2。
                     X:D=嫡出子:婚外子=2:1
                     それで、Xの相続分 1/2×2/3=1/3
                          Dの相続分 1/2×1/3=1/6 
                      

(c) 養子と実子
  養子は、縁組の日から、養親の嫡出子としての地位を取得します(809条)。
従って、養子と実子とで、法定相続分に違いはありません。

② 第2順位の血族相続人-直系尊属
     
     子がいない場合の、血族相続人は、直系尊属になります。
     すなわち、父母、父母が既に死亡しているが祖父母が生存している場合は祖父母となります。
 
(a) 親等が直近の尊属のみ
       
       つまり、父母がいれば、祖父母には相続権がありません。
 
(b) 法定相続分

直系尊属グループ  3分の1
配偶者       3分の2

【ケース】
Aには妻Wがいるが,子はいない。
Aの両親P1・P2と祖母Gが健在である。
Aが死亡した。
          
         法定相続人は、(WとP1,P2)   ※Gには相続権はない。

法定相続分は  W(2/3)  配偶者
                       P1、P2それぞれ(1/6)   1/3×1/2



③ 第3順位の血族相続人-兄弟姉妹 
 
     被相続人に、子がおらず、両親や祖父母もいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。  

(a) 法定相続分
  兄弟姉妹グループ   4分の1
配偶者        4分の3

(b) 兄弟姉妹が数人いる場合は、同順位で、かつ均等の相続分となります。

(c) 半血兄弟姉妹と全血兄弟姉妹
  
       半血兄弟姉妹の法定相続分は、全血兄弟姉妹の半分

【ケース】
Aには,妻Wがいるが,子は いない。両親や祖父母も既になくなっている。
Aには兄弟X,Yがおり、このうちXはAと両親を同じくするが(全血兄弟
姉妹),Yは,AおよびXと母親を異にする(半血兄弟姉妹)。

法定相続分は

W(3/4)  配偶者は3/4
X(1/6)
Y(1/12)
                     ※ 兄弟姉妹グループは全体(XとY)で、1/4
                       X:Y=全血兄弟姉妹:半血兄弟姉妹=2:1
                     それで、Xの相続分 1/4×2/3=1/6
                          Yの相続分 1/4×1/3=1/12 
                      

 文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
  
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# by hideki1975da | 2011-10-11 15:11

第11回 遺産共有

1 遺産共有とは何か?

  相続が始まる(人が死亡する)と、複数の相続人は各自の相続分に応じて相続財産を共有する(民898条)ことになります。
 この共有状態のことを「遺産共有」と言います。

  この遺産共有状態は、「遺産分割」までの暫定的な状態です。

 【イメージ】
相続の開始(=Aの死亡)→ 遺産共有 → 遺産分割

   
   例えば、Aさんの遺産に土地があって、Aさんが死亡するとまず、その土地はAの相続人の共有になって、そののちに、遺産分割の話がついたときに、最終的に誰のものになるか決まる、という仕組です。 


2 共有される相続財産と、分割される相続財産

(1) 全ての財産が共有になるわけではない

  財産の種類によって  
相続開始と同時に  → 1 共有になるもの
      2 (共有にならずにいきなり各相続人に)分割されるもの
   

                     という区別があります。

(2) 具体例
 
① 金銭債権

   (a) 当然分割である(学説上対立はあるが、実務は当然分割。共有にならない

  【ケース】
Aが死亡し,相続人は子X・Yである。
Aは銀行に対する1000万円の預金がある。

この場合、預金は、

遺産分割を待つまでもなく、法律上当然に法定相続分に従い分割される。

     というのが判例の立場です。

このケースでは、相続開始(Aの死亡)と同時に、X、Yが各自500万円を分割承継することになります。

 つまり、遺産分割の話し合いが未了であっても、Xは、銀行に対し、500万円の払戻を請求できる、ということです。(Yも同様です。)


平成28年12月19日最高裁判決により、預貯金については、当然に分割されるのではなく、遺産分割の対象となると判例変更されました。

(b) 注意
      ただし、金融機関(銀行など)の実務においては、共同相続人の1人が自己の相続分に相当する額の払い戻し請求をしても応じてくれない例があります。金融機関がトラブルを恐れるという理由が多いと思います。
 このような場合は、訴訟をすることになる場合があります(弁護士を代理人として交渉して、支払って貰えた例もあります)。

(c) 遺産分割との関係
本来、預金は、遺産分割の話し合いをする必要のないものですが、共同相続人全員が同意すれば、これを遺産分割の対象財産の中に取り込んで分割協議の対象にすることは差し支えありません。

  平成28年最高裁判決により、預貯金は遺産分割の対象となる旨判例変更されています。
 
 現実にも、不動産などに比べて、預金を配分するのであれば微調整をすることもしやすいので、預金を含めて遺産分割の話し合いをすることが現実的な解決に役立つ場合が多いです。

(d) 関連問題-実務上多く見られる問題

      【ケース】

       母Mが死亡し、相続人は、子であるX、Yの2人である。
       Xは、母Mの預金通帳等一切を管理していた。
       母Mの死後、Yは、遺産分割に当たり、Mの預金について残高や今までの出入金の記録を入手したい。  

      このような場合、Yさんは単独で(Xの同意や印鑑などはなくても)銀行に対して、預金の取引履歴を開示するように請求できます。     


      「共同相続人の1人は、金融機関に対して、預金経過の取引履歴(全体)を開示請求できる」というのが判例の立場です。共同相続人の1人は、被相続人の預金者としての地位を相続していると考えられるから、というのが理由です。



② 金銭債務

     借金などはどうなるのでしょうか?

(a) 原則は、当然分割である

      【ケース】
Aが死亡し,相続人は子X・Yである。
AにはBからの1000万円の借入金債務があった。


   この場合の相続関係は、次のようになります。

   Bに対する1000万円の債務は、相続開始(Aの死亡)と同時 に、X・Yが各自500万円について分割承継することになります。

 ですから、Bさんとしては、Xに対して500万円、Yに対して500万円貸金返還の請求をすることができることになります。

(b) 遺産分割との関係

  預金の場合と同じで、本来は遺産分割をする必要はないのですが、共同相続人が同意すれば、遺産分割の対象財産にすることができます。

ただし、それによって、上記(当然分割された場合)と異なる債務の引き受け関係になったとしても、債権者に対しては無条件に免責されません(免責には、債権者の承諾が必要)。※たとえば、上の例で、遺産分割の話し合いの結果、Xが0円、Yが1000万円の債務を承継することにしたとしても、Bさんが承諾しなければ、BさんはXに対して、本来の500万円の請求が可能だということです。

(c) 注意を要するケース 不動産賃借人の賃料債務など

     [ケース](弘文堂「相続法 第3版」潮見佳男著より引用)

Aは,妻W,子X・Yとともに,月額18万円の賃貸マンションで生活していた。
Aが死亡し,W・X・Yが相続した。Wらは,現在のマンションに住み続けたい。


これも、金銭債務なので、一見、上の(b)によれば、分割されるのではないかという風に見えます。もしそうだとすると、毎月、Wは9万、Xは4万5000円、Yは4万5000円の賃料支払い義務を負うことになります。逆に言えば、家主は、W,X,Yのそれぞれに、少額ずつの賃料支払い請求をしなければならない、ということになります。

     こう書けば、もし、(b)のルールで「当然分割」とすれば、家主の立場からして相当不便なことになるのでは?ということに気づかれたでしょうか。

     この場合は、賃料支払い債務について、

「性質上の不可分債務」(賃料債務は、一つの建物を借りるという共同不可分に受ける利益の対価であるため、分割できないとされている。判例。)

として、連帯債務と同様に、債権者は、どの債務者に対しても、全部の履行の請求をすることが出来る(民法430,432条)というのが判例の立場です。

      つまり、家主は、W,X,Yの誰に対しても18万円の賃料請求をすることができます。(もちろん、本来の3倍の賃料を取れるわけではなく、誰かが家賃全額を払ってしまえば、他の人の義務も消えます。)
 

③ 金銭

     これは預金のことではなくて、現金(いわゆる現ナマ)として存在する金銭のことです。

これは共有とされます(当然には分割されない)。

  不動産や他の動産と同じく「有体物」であり、遺産共有となり、遺産分割の対象とされます。


★ 以下は、少し細かい内容です。


(3) 共有される遺産の管理

① 共有に関する規律の適用

(a) 保存行為は、相続人が各自で単独で行える。(民法252条但書)
例  貸付金債権の時効中断措置、建物の修繕など

    (b) 利用・改良行為は、相続分による過半数で決する。(民法252条本文)
 
    (c) 個別財産の処分(建物を売ってしまうことなど)は全員の同意による。


② 審判前の保全処分(家庭裁判所に遺産分割の審判を申し立てた場合)
  
     遺産分割の審判がなされる前に、誰かが勝手に処分してしまうのではないかと危惧される場合などに、当事者が家庭裁判所に申し立てて、保全処分がなされることがあります。

     遺産管理者の選任などがなされます。

③ 熟慮期間中の遺産管理に関する特則

(a) 自己の財産におけるのと同一の注意をもって管理する(民918条1項)

    (b) 相続財産の保存に必要な処分

     必要に応じて(共同相続人間での対立が激しい場合など)、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所が命じてすることができます(民918条2項)。
たとえば、相続財産管理人の選任、財産処分の禁止などが、これにあたります。


(4) 遺産確認の訴え

ある財産が遺産の範囲に入るかどうかの確認の訴えを起こすことが出来ます。これは、遺産分割の前提問題です。

 文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所

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# by hideki1975da | 2011-10-07 14:38

第10回 相続財産の包括承継

1 基本

   「相続」とは、一体何を相続するのか?ということについて解説します。
   簡単に言うと,次の通りです。

原則 - 財産関係(複数ある色んな種類の財産や、権利なども)が全て一体として承継される 

 ですが、死亡した人が勤めていた会社に対する従業員の地位などは、死亡した後相続人に引き継がれることはありません。事の性質上、その人限りのものです。

 それで、

例外 - 帰属上の一身専属権(事の性質上、その人限りで、相続されたりはしないと考えられるもの。上記の例など)は除外される

ということになります。


2 帰属上の一身専属権(相続によって承継されないもの)

  次のようなものがあります。これらは、相続によっても承継されません。

(1) 明文の規定がある者
代理権
使用貸借における借主の地位
雇用契約上の地位  など

(2) 明文の規定はないがほぼ異論のないもの
扶養請求権、(離婚の際の)財産分与請求権、生活保護受給権
 ※ ただし、これらが一定額の給付請求権として具体化していた場合(金額が決まっていて、後は支払うだけという状態になっていた場合)には、相続可能です。

(3) 議論があるもの
占有権に関係する問題、保証債務(とりわけ根保証)生命侵害の不法行為による損害賠償請求権など


3 生命保険金と死亡退職金について

   生命保険金と死亡退職金については、それが相続財産に入るかどうか、という点に議論があります。

(1) 生命保険金請求権
① 受取人の定め方によります。
  (ⅰ) 特定の人が指定されている場合
       →受取人の固有財産(相続したものではなく、受取人自身の財産ということ)であって、相続財産ではありません。
  (ⅱ) 受取人を「相続人」としている場合
         →この場合も、相続人の固有財産であって、相続財産ではありません。
         cf ただし、相続税との関係では、相続とみなして相続税課税されます。
  (ⅲ) 受取人指定していないが、保険約款中に「指定の無いときは、保険金を被保険者の相続人に支払う」との条項がある場合
         →(ⅱ)と同じで、相続人の固有財産であって、相続財産ではありません。

  (ⅳ) 亡くなった人(被相続人)が自分本人を受取人に指定していた場合
         → 相続財産になります。   

② 受取人に指定された者が死亡した場合
保険契約者が生存しておれば、変更できる(保険法43条)
そのまま保険契約者が死亡したら、受取人の「相続人の全員」が受取人(46条)となります。
これも相続財産ではなく、受取人の固有財産です。

   問題は、保険金を、複数の受取人がどのような割合で受け取るか?ですが、それぞれの人数で頭割りする(平等の割合)というのが判例です。


(2) 死亡退職金
受取人の固有財産であり、相続財産に属しない。

5 祖先祭具の承継問題
祖先祭具の承継は、 「相続」ではないとされます。つまり、財産などの「相続」と区別されるということです。
 祖先祭具は、 祭祀の主宰者に承継されることになります。
祭祀の主宰者とは誰かというのは、第1に被相続人の指定、第2に慣習、第3に家裁の審判により決まります。

 文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所)  
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# by hideki1975da | 2011-10-05 13:40

第9回 相続人の不存在~相続財産管理人、特別縁故者など

1 相続人不存在制度とは?~2つの柱

  今まで、人が死んだときに、相続人は誰になるのかとか、相続人は承認するのか放棄するのか、という問題を解説してきました。
 ですが、人が死亡したが相続人が1人もいない場合はどうなるのでしょう?
 また、相続人全員が相続放棄をした場合はどうなるのでしょう?

 こういう場合について、「相続人不存在」の制度があるので、見ていきましょう。
 民法は、次の(ⅰ)(ⅱ)の2つの仕組、手続による処理を用意しています。


(ⅰ)相続財産法人 をつくる

      これは、相続財産の管理・清算をするための仕組です。
      後に説明しますが、「法人」ですから、会社などのように、人間(「自然人」といいます)ではないけれども、財産や権利・義務を持っている者というものを考えるということです。
 少しややこしいですが、財産処理のための技術のため、そういう風に考える、というイメージです。

(ⅱ)相続人不存在を確定するための手続
         
      相続人不存在といっても、たとえば、戸籍上相続人が居なくても、実際には存在する可能性もゼロではありません。
 それで、念のために、相続人が居るかどうか探索する手続を用意しています。
    
 
2 相続財産法人
(1) 相続財産法人の成立

  「相続人のあることが明らかでない」こと  これが《要件》です。

    次のようなケースが考えられます(いずれも、弘文堂「相続法 第三版」に挙げられている例です)。


[ケース1]
Aが死亡したが,Aの戸籍からは相続人となるべき者がみつからない。

[ケース2]
Aが死亡した。Aには,子X・Yがいるが,XはAにより廃除されており(なお,相続欠格の場合も同じ),また,Yは家庭裁判所で相続放棄の意思表示をした。そのほかに,Aに推定相続人は存在しない。


  被相続人死亡の時点で、相続財産法人は、(法律上は)当然に成立するとされています。

    「当然に」というのは、何が当然なのか?と思われると思いますが、ここでいう「当然に」は「何か特別な手続をする必要もなく」という意味です。

    つまり、上記のようなケースでは、Aさんが死亡した時点で、相続財産は「法人」となります。
   「法人」となる、ということは、例えば、その相続財産に関係する裁判については、「亡Aの相続財産法人」が原告になったり被告になったりするということです。

   もし、Aの生前、Aに対して訴えを起こすつもりの人がいたとして、Aが死亡したあとは、「被告 亡Aの相続財産法人」と書いた訴状を作成して、訴えを起こすことになります。

  つまり、なぜ、わざわざ財産を「法人」とするかといえば、例えば、このような訴訟を起こす等の場合に、処理しやすいようにする、という技術的な理由ということになります。

    
(2) 相続財産管理人

   「相続財産法人」で出てくる「法人」というと、会社などをイメージします。
   会社であれば、代表取締役などがいて、会社の業務を執行したりします。
   あたりまえのことですが、会社は人間(自然人)ではないけれども、実際に動かすのは人間(自然人)なのです。
   同じように、「相続財産法人」についても、その「法人」を実際に動かす人が必要になります。
   それが「相続財産管理人」と考えるとよいでしょう。

① 家庭裁判所による選任

相続財産管理人は、利害関係人または検察官の請求によって、家庭裁判所が選任します。
利害関係人とは、債権者、特定遺贈の受遺者、徴税権者としての国、特別縁故者として遺産の分与を申し立てる者などが考えられます。


② 相続財産管理人は、相続財産法人の法定代理人という地位にあります。
     
  「法定代理人」とは、未成年者に対する親権者のように、法律で代理人と決められいて、本人の代わりに契約などの法律行為をすることが出来る者です。  

  相続財産管理人は、相続財産の現状調査義務や財産目録作成義務などを負います。


(3) 相続人の存在が後日に明らかになった場合

     ところで、当初相続人は不存在と思われていたが、後日相続人が居ることが分かった場合はどうなるでしょう?
 次の通りです。

① 相続財産法人は当初より存在しなかったことになる(民955本文)
② 相続財産管理人の地位は?
①にもかかわらず、既にした行為は有効です。
(判明した)相続人が相続の承認をするまで、「相続人の法定代理人」として代理権が存続します。


3 相続人不存在を確定するための手続-相続人の捜索と遺産の清算

  「相続人不存在」の制度についての2本の柱、その1つは「相続財産法人」でした。
  もう一つの柱は、「相続人不存在を確定するための手続」です。
 
  念のため相続人が本当にいないかどうかを調べながら、相続財産の処理がなされることになります。

(1) 相続財産管理人の選任-出発点
(2) 家裁による公告(相続人捜索公告としての機能)
     2ヶ月間
(3) 債権の申し出の公告 (2か月を下らない期間)

(4) 清算開始              ★ここで、借金などの債務の弁済、配当などが行われる。

(5) (検察官又は利害関係人の請求によって)最後の相続人捜索の公告

(6) (残余財産があれば分配)

  ★ 借金等を支払っても財産が残っていた場合、相続人もいないので、一体誰がそれを引き継ぐのか?という問題になります。それが次の「4 残余財産の帰属」の問題です。


4 残余財産の帰属

  だれも、承継する者がいない場合、最終的には、相続財産は国庫に帰属する(国のものになる)ことになります。
 しかし、国のものにするより前に、それよりは、故人(被相続人)と関係の深かった者に継がせるということのほうがよいのではないか、というのが「特別縁故者への財産分与」の制度です。

(1) 特別縁故者への財産分与

① 1962年民法一部改正により導入されました。 民法958条の3

② 相続人がいないことが確定した場合にだけ、考えられる制度です。

③ 特別縁故の意味とは、例えば次のようなものです。

(a) 死者と生計を同じくしていた者
    内縁配偶者、事実上の養子など

(b) 死者の療養看護につとめた者

(c) その他死者と特別の縁故があった者

④ 特別縁故資格を有する「人」

  自然人に限らず法人でも良い(会社、財産法人、宗教法人、学校法人、地方公共団体など)

⑤ 分与の手続

  最後の相続人捜索期間満了後3か月以内に、家裁に分与の申立をする必要があります。

⑥ 分与される財産

「清算後残存すべき相続財産」から分与されます。
全部か一部かは家裁の裁量で決まります。

(2) 遺産の国庫への帰属
(1)を経た後の残余財産は、国庫へ帰属します。

 文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所)  
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# by hideki1975da | 2011-10-04 15:30

第8回 相続資格について②~放棄と承認

1 総論
① 意義

  人が死亡すると、相続人は、自分の意思とは関係なく、亡くなった人の財産関係を継ぐ立場になります。
  しかし、亡くなった人(被相続人)に多額の借金がある場合もあるし、そうでなくても相続したくないという場合もあります。
  そこで、民法は、相続する側の利害や希望にあわせて、選択の余地を残しました。

相続するかどうか、と言う場面では、相続人には3つの選択肢があります。

 相続放棄    相続の効果を確定的に消滅させる

 単純承認 相続の効果を確定的に帰属させる

限定承認 被相続人の残した債務や遺贈を相続財産の限度で支払うことを条件として相続を承認する


  以上の3つの選択肢です。上の2つ「相続放棄」と「単純承認」は、要するに相続するかしないかなので、分かりやすいと思います。
  「限定承認」は分かりにくいかもしれませんが、要するに、借金なども相続するが、相続財産がある範囲で支払うだけで「相続財産以外の、もともとの自分の財産まで持ち出して払わなくてもよい」という限定をつけて相続するということです。

② 熟慮期間

  相続人には相続するかどうかの選択の余地があることになりますが、これがいつまでもはっきりしないのでは色々と法律関係が不安定になり不都合が発生します。
  そこで、民法915条は、相続放棄・承認の意思表示をすることが出来る期間を定め、それを過ぎて意思表示がなされない場合は単純承認したこととみなすことにしています。 
  ここでいう「相続放棄・承認の意思表示をすることが出来る期間」のことを熟慮期間といいます。

「熟慮期間」は次のように決められています(民法915条1項)

     自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月
→この間に限定承認又は放棄がなされなければ単純承認とみなす


「自己のために相続の開始があったことを知った時」
 被相続人の死亡  と  自分が相続人であること とを知ること

※  但し、財産の調査2時間がかる場合などは、延長することができます。
     延長は、家庭裁判所に請求をすることによってできます(民法915条1項但書)。

  

※  実務上問題となりやすいケースとして、弘文堂「相続法 第3版」に挙げられているケースを引用すると次のとおりです。

[ケース]
70歳のAには,子Xがいるが,XはAのもとを離れて自活していた。
Aは,国民年金とXからの仕送りで生活していたところ,心不全で急死した。
XはAの唯一の相続人であり,Aの死亡をすぐに知らされている。
A死亡後4か月を経た後,Xのもとを金融業者Gが訪れ,「1年前にAはSのために500万円の借金の保証人になっていた。契約書もここにある。Aが死亡した以上,相続人であるXが保証債務を履行せよ」と迫った。
Xにとっては,寝耳に水の話であった。

 
  このようなケースについて、最高裁判所の判例があり、一定の事情がある場合には、「3か月」を計算する際のスタート時期を事情に合わせて考えることによって、相続人を救済することを認めています。


 最高裁s59.4,27の趣旨
(ⅰ)3か月以内に放棄等しなかったのが被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、

かつ、

   (ⅱ)当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、上記のように信じるにつき相当の理由があると認められるときには、例外を認める。

  この場合は、「相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時」とする。

 ※ 上の最高裁の基準は、3ヶ月間を過ぎても救済される(放棄できる)のはかなり限定された場合だけ、という印象があります。
 実際には、後になって借金があったことが判明するケースは上記のような判例の基準に当てはまらない場合でもたくさんあり、それで放棄が認められないのは相続人にとってあまりに酷であるというケースも多々あります。
 上記判例の基準に当てはまらない場合でも、後に借金があることが判明し、放棄をしたくなるのも無理もないというケースには、家庭裁判所に対して、放棄の申述という手続を行うのが実際です。


③ 再転相続
   
     比較的まれですが、次のような場合があります。

[ケース]
Aが死亡し,子XがAを単独相続した。
ところが,A死亡の2か月後に,Xも死亡し,W(Xの妻)がXを単独相続した。
Xは,生前にAの相続について承認も放棄もしていなかった。


    ※ A→X→Wの相続です。
     
    ※ このような場合、亡きXの選択権(XがAについての相続について承認するか放棄するか)も含めて、Cが承継することになります。つまり、A→Xの相続について、Wが承認又は放棄を選択できることになります。


④ 選択の撤回・取消・無効
    いったんされた相続放棄・承認の意思表示については、撤回できないことになっています。(民法919条1項)。

★ 以下、3つの選択肢それぞれについて、「2 相続の放棄」「3 限定承認」「4 単純承認」の項目に分けて解説します。

2 相続の放棄について

  相続の放棄は要式行為の一種であり、決まった形式で行うことが必要です。

この場合の決まった形式というのは、家庭裁判所での申述をし、受理審判を受けることです。

相続の放棄をした効果は次の通りです。
  - 相続放棄をした者は、最初から相続人にならなかったものとみなす(民939条)。
 放棄者の子らがいても、代襲相続は発生しない。

3 限定承認について  ※少し難しいので、余り興味のない方は飛ばして頂いてもかまいません。

  限定承認は、上に書いたように、相続するのですが、債務については一定の限定された責任のみを負うというものです。

  ただし、利用されにくいのが現状です。
その理由は、  1 熟慮期間内に、財産目録を作成・提出する必要があること
         2 共同相続人全員でのみできるとされていること
によると考えられています。 
 
限定承認の効果は次の通りです。
    ・ 相続人の固有財産 と 相続した相続財産 が分離して取り扱われる。
     ・ 債務は全額承継される(但し、「相続債権者に対しては、相続財産をもって弁済をする。」民929条。相続財産を限度とする物的有限責任。)
・ 一種の清算手続(債権届出についての公告、配当)が行われる。


4 単純承認について

  単純承認の意思表示をすれば、単純承認となることは当然です。

  ですが、承認するとの意思表示がなくとも、次の事実があるとき、相続人が「単純承認」をしたものとみなすことになっています(民法921条)。

  これを法定単純承認といいます。

法定単純承認
   承認するとの意思表示がなくとも…
(ⅰ) 相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき(民921条1号本文)
(ⅱ) 相続人が熟慮期間内に限定承認も放棄もしなかったとき(2号)
(ⅲ) 相続人が限定承認または相続放棄の意思表示をしたが、その意思表示をした後に相続財産の全部または一部を隠匿したり、ひそかにこれを消費したり、悪意で財産目録に記載しなかったとき(3号本文)

これらのことがあれば、単純承認があったとみなされる。

 文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所)  
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# by hideki1975da | 2011-10-04 14:11


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