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第7回 相続資格について①~欠格と廃除

 民法では、相続人となる資格があるとされている者であっても、その行いによって、相続資格がなくなる場合があります。
 相続制度の基盤を破壊するような行為をした場合や、ひどい非行があった場合などです。
 
 このような場合について、「相続欠格」という制度と、「相続人の廃除」という制度があります。

 今回はこれら二つの制度について、見ていきます。

(1) 欠格

 ケースを2つ挙げて説明します。


[ケース1]
Aの相続についての問題。
 子Xは、Aの首を絞めて殺害し、殺人罪により懲役の実刑判決を受け、その判決は確定している。


[ケース2]  
 ※ 註以外は、弘文堂「相続法第3版」潮見佳男著に挙げられている例題を引用しました。
 Aには,妻Wと子X・Yがいる。
 以前に,Aは,家族の面前で「自分の遺産は,Xに全部譲る」との自筆証書遺言を作成したが,その後にXがAに対して傲慢な態度をとるようになったため,Aは「自分の遺産は,Yに全部譲る」との遺言に改めようとした。
 ところが,これを知ったXは,「いったん書いてしまった遺言は取り消すことができない」(村上註:本当は取消すことも出来ます)とAをだまし,変更を断念させた。


① 欠格事由
      
 どのような行為をすれば相続欠格になるかということは、民法891条に規定されています。
 分類すると、(1)被相続人を殺すなどした場合と、(2)被相続人の遺言を自分のしたいように歪めるなどした場合ということになります。

 民法891条1号2号  被相続人等に対する殺害行為に関係するもの →上のケース1
 同3,4,5号     遺言行為に対する不正な干渉に関係するもの  →上のケース2


② 効果
欠格の事由にあたれば、当然に相続資格を失うことになります。 
ここで、「当然に」というのは、当事者の申立等による必要もなく、という意味です。
 ただし、相続欠格者に子があれば、子が代襲相続します。


(2) 廃除

① 意義-人的信頼関係の破壊
     
 被相続人の意思により、家裁が推定相続人の相続資格を奪う制度です。
 簡単に言えば、自分に対して悪い行いをした者に対して、相続をさせたくないという、被相続人の意思を反映する制度です。 

② 廃除対象者

 遺留分を有する推定相続人(配偶者、子、直系尊属)だけが、ここでいう「廃除」の対象となります。
 遺留分については、別のところで説明しますが、遺留分のない相続人(兄弟姉妹)等については、被相続人がその者に遺産を渡したくない場合には、遺言で別の者に遺産を全部相続させることにする等の方法をとれば目的を達します。
 なので、制度としては、配偶者・子・直系尊属だけについていざとなれば「廃除」できるようにしておけばよいというわけです。

③ 廃除事由
 (a) 廃除対象者が被相続人に対する虐待若しくは重大な侮辱をした場合
        
   次のような場合がこれにあたるとされています。

[ケース1]
 XはAの子である。
Xは,Aに対して,日常的に絶えず暴力行為に及んでおり,Aに対する傷害容疑で逮捕されたこともある。


(b) 著しい非行      
       
 非行といっても程度問題であり、どの程度の非行で「廃除」の理由になるかの線引きは難しいです。
 要するに、その非行が、相続人としての資格を失わせてよいほどに酷いものか、ということになります(詳しく学びたい人向け →参考判例 名古屋高裁金沢支部決定 平成2年5月16日 家裁月報42-11-37)。

 下に挙げたケースでも、一概に「廃除」の理由になるかどうかははっきりしません。Aに対する脅迫的言動などがどれほど酷いものであったか(犯罪に近いようなものであったか)ということによると考えられます。
     
[ケース2](弘文堂「相続法第3版」潮見佳男著より引用)
Aには,妻Wと子Xがいる。Xは,大学卒業後に浪費,遊興,犯罪行為,女性問題を繰り返し,正業に就かず,脅迫的言動をおこなってAに金銭を要求し続けていた。

④ 廃除の方法
 本来ならば自分の相続人になるのだけれども、行いが悪く「廃除」したい、という人がいる場合どうしたらよいのでしょうか。
 次の2通りがあります。

 (a) 生前廃除(892条)

  被相続人が生存中に家庭裁判所に調停又は審判を申し立てる方法です。

(b) 遺言廃除(893条)

  被相続人が遺言で、「○○を廃除する」旨を書いておく方法です。

⑤ 廃除の取消

 廃除の制度は、被相続人の意思によって、相続資格を奪う制度ですから、被相続人の意思次第では、取消すことも可能です。「色々あったけれど、やっぱり、○○にも自分を相続してもらおう。」と思い直した場合です。
 廃除を取消すことは、廃除するときと同様に、家庭裁判所への申立又は遺言をすることによってできます。


⑥ 廃除の効果

 廃除された人は相続資格を失います。
廃除された人に子があれば、子が代襲相続します。

             文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所)  
                                               
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by hideki1975da | 2011-09-30 14:47

第6回 相続人③ 同時死亡の推定

 2つの例をあげて(下のケース1,2)をあげて、説明します。


 相続に関係のある2人以上の人が同じ機会に亡くなった場合(下のケース1)や、どちらが先に亡くなったか不明の場合(下のケース2)には、同時に亡くなったものと推定して考えます。

 同時に亡くなったと推定するということは、片方が死亡したときに他方も死亡していたと考えるという意味で、「同時存在の原則」(相続がなされるためには、被相続人の死亡時に相続人が存在していなければならない)を満たさないから、この2人についてはお互いに相続したりされたりすることがない、ということになります。

  どちらのケースもAの死亡については、子Xは死亡しているものとして、配偶者であるWと母であるQが相続します。また、子Xの相続については、父Aは死亡しているものとして、母であるWが相続します。

 ただ、これはあくまで「推定」ですので、もしもどちらが先に死亡したかが特定できる証拠があれば、証拠によって判明する順番に従った相続がなされ、相続人が誰かが上記の説明と違うことになります。

ケース1
Aと子Xは、一緒に飛行機に乗っていたが、飛行機事故により両者とも死亡した。
Aには,妻Wがおり,また,Aの母Qも健在である。



ケース2
Aは,病死した。ほぼ同時期に、子Xが山で遭難して死亡した。
AとXの死亡時刻の先後は不明である。
Aには,妻Wがおり,またAの母Qも健在である。


この場合、
① 同時死亡者相互間(AとXとの間)では相続なしとなります。
② 同時死亡者の1人に代襲者(子)がいた場合 → 代襲相続有り(よって相続有り)
     もしも子Xに子K(Aからみれば孫)がおれば、Kによる代襲相続があります。

             
  文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所)  
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by hideki1975da | 2011-09-28 14:54

第5回 相続人② 相続人の種類

 法定相続人は、「血族相続人」と「配偶者相続人」との組み合わせとなります。

1 血族相続人
順位がある。下の①~③の順位により、上の順位の者が相続人になる場合、下の順位の者は相続人になれません。(たとえば、子がいる場合、父母や兄弟姉妹は相続人になれないということです。
① 子           
② 直系尊属   親等のいちばん近い人のみ(つまり、父母がおれば祖父母は相続人にならない。)
③ 兄弟姉妹      

2 配偶者相続人
常に相続人となる。


例1  Aさんが死亡し、妻Wさんと、子X,Yさんがいた場合の相続人は?


答  「血族相続人」として、子XY。(血族相続人について、子XYがいる以上、父母や兄弟姉妹がいても変わりません)。
   「配偶者相続人」として、妻W。
   従って、X,Y,Wの3名が相続人になります。


例2  Aさんが死亡した。妻Wさんがいる。Aに子はおらず、父母(祖父母なども)も既に他界しており、兄Bがいる。この場合の相続人は?

答  「血族相続人」として、兄B。(血族相続人について、第1順位の子、第2順位の直系尊属がいないので、第3順位の兄弟姉妹が相続人となる。)
   「配偶者相続人」として、妻W。
   従って、BとWの2名が相続人になります。


3 議論のあるもの
  内縁配偶者・事実婚パートナーの相続問題があります。
  つまり、実際上は配偶者(夫、妻)のようですが、籍が入っていないという場合の問題です。

この場合、冷たいようですが、現在の法律上は相続権はありません。

これと関連して、死亡の際に、民法768条(法律婚における離婚の際の財産分与)の規定を類推適用することはできないか、という論点が有ります。
  要するに、離婚の際の「財産分与」と同様に、財産分けをして、亡くなった人の財産を内縁の夫(又は妻)に分けてあげるように考えられないか?ということです。
  これについては、学説は分かれており争いがありますが、判例は、否定しています。

               文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
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by hideki1975da | 2011-09-28 14:37

第4回 相続人① 総論~胎児、代襲相続

1 相続人は、法律(民法)で定められています。
  勝手に、「○○さんを相続人にする」という風に決める事は出来ません。

2 被相続人・相続人の「同時存在の原則」

  被相続人が死亡した際に、存在している(生きている)人しか相続人になれない、というのが原則です。

  ただし、これには2つの例外があり

  ① 胎児の場合
  ② 代襲相続がなされる場合

 というのがあります。それを以下に説明します。

3 胎児の場合

  ケース1   
 
  Aさんが死亡した場合の相続の問題。
  そのとき、妻Wさんがおり、Wさんのお腹の中に子Xがいた(胎児)場合、どうなるでしょうか。


  この場合、Xさんはまだ生まれていないのですが、「相続の場合は胎児を生まれたものとみなす」(民法886条1項)という規定があり、Xさんも相続人になれます。

  ですので、妻Wと子Xが、亡くなったA(の財産など)を相続するということになります。

  ただし、「胎児が死体で生まれたとき」つまり死産のときは、相続できないことになります(民法886条2項)

4 代襲相続の場合

  ケース2

  Aには,子X・Yがいた。
しかし,Xは,その子Kを残して既に死亡している。
この状況でAが死亡した。

  
  この場合誰が相続人になるか、という問題です。

  本来は、2人の子(X、Y)が相続人になるのです。
  しかし、そのうち1人(X)は、親であるAよりも先に亡くなっているので相続できないかのように思えます。
  
  それでも、Xの子がいる場合は、本当はXは相続できないのが原則(同時存在の原則)だけれども、Xの子(孫K)がXにかわって相続できることが民法で決められています。

  これを「代襲相続」といいます。

  以下は、少し細かい話になります。(現時点で、分かりにくい方は読み飛ばして頂いて結構です。)

・ 上のケースで、Xが既に死亡している場合の他、「廃除」「欠格」の場合も同様に代襲相続できる。
・ しかし、Xが相続放棄した場合は、代襲相続は生じない。
・ 代襲相続は、被代襲者(もともとの相続人)の子のみできる。配偶者は代襲相続できない。
・ 養子縁組が関係する場合には注意が必要です。
→ 養子縁組後の子   代襲できる
養子縁組前の子   代襲できない
(民887条2項但書 「被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。」を適用した結果、こうなります。) 
・ 再代襲相続
          子も孫も死亡しており、ひ孫が生存している場合→代襲相続できます。
            (直系卑属の場合、ひ孫、やしゃご・・・どこまでも)
          兄弟姉妹に対する代襲相続もありますが、「甥」「姪」止まり。
                 「大甥」「大姪」        →×
          但し、この点は、法改正が関係しており、相続の開始が1981年1月1日より前か以降かで結論が異なります(現在は、「甥」「姪」までしか代襲相続できません)。



  
               文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
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by hideki1975da | 2011-09-27 17:04

第3回 相続の開始~人の死亡

 相続は、人の死亡によって開始します。

1 人の死亡の意味
 
  近年は医療技術が発達し、どの時点で人が死んだことになるのか、問題になることがあります。

  例えば、「脳死は人の死か」というような問題です。

  人の死亡は、原則 心肺停止 と考えて結構です。

  大部分のケースは、これだけ覚えておいて頂ければ大丈夫です。

但し、臓器移植法(平成9年成立、平成21年改正)が適用される場合は、同法でいう「脳死」の時点で「死亡」となり、相続が開始します。 


★ 以上は、通常の人の死の場合です。
  つまり、目の前で、(心肺停止にしても、脳死にしても)人が死んだことが確認出来た場合です。
  
  人が死んだことが確認出来ない、かといって、生きているとも思われないような場合に、次の制度(「認定死亡」「失踪宣告」)があります。
    

2 認定死亡(戸籍法89条)

「水難、火災その他の事変によって、死亡したことが確実視される場合」には、遺体が確認出来なくても、その人が死亡したと推定して、相続が開始します。

 ただし、その人が生きて現われた場合などは、認定死亡が取消され、(一旦は開始したように見えた)相続も開始しなかったことになります。

3 失踪宣告

  一定期間以上、 生死不明の場合です。
  利害関係人(子など)が家庭裁判所に申立て、家庭裁判所が失踪宣告(民法30、31)をすれば、生死不明の人は死亡したものとみなし、相続が開始します。
  
  ただし、失踪宣告がなされた後に、その人が生きて現われた場合などは、家庭裁判所が改めて宣告をすることによって、失踪宣告が取消され、相続も開始しなかったことになります。

                      文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
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by hideki1975da | 2011-09-20 15:55

第2回 相続制度とは②~「相続」の基本

 前回、誰かが亡くなったら残された財産をどうする?それを「相続」問題と考えよう、という話でスタートしました。

 ですが、正確に言うと、「相続」とは、

残された財産をどうする?

だけの問題ではないのです。それを解説しましょう。

    
 相続は、被相続人の死亡により開始します(民法882条)。
 
 相続の話では、「被相続人」という言葉が出てきますが、「被」とは「~される」という意味ですから、「相続される人」つまり、「被相続人」とは、今回亡くなった人のことです。


 そして、相続では、 「被相続人の財産に属した一切の権利義務」が相続人に承継されます(民法896条)。
 難しい表現ですが、

 金銭、不動産   というような「物」だけでなく、

 預金、貸金     などの権利も

 借金         などの義務も


一切合切、相続で、相続人(例えば、残された夫、妻、子など)に引き継がれる、ということです。

 詳しくいえば、相続があって引き継がれる種類のものと、一代限りで引き継がれない種類のものがありますが、その区別は、また後日お話しします。

 

         文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所)  
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by hideki1975da | 2011-09-20 15:16

第1回 相続制度とは①~法定相続と遺言と

 誰かが亡くなると、残された財産などをどうするのか、誰が引き継ぐのか、などの問題が起こります。

 こういう問題のことを「相続」と呼ぶ、と考えておきましょう。

 さて「相続」とはどんな制度になっているのでしょうか。

 法律でどんな制度になっているのか?を考えるときには、「どんな考え方」で制度が作られているかを考えると分かりやすくなります。

 ここには、大きく分けて2つの考え方があります。

1  法秩序(憲法のもとでの望ましいと考えられる法秩序) を大切にする考え方

  日本国憲法では、個人を尊重することが定められ、法の下では、ひとりひとりは平等に扱われる(男女も平等)ということになっています。

  そうすると、たとえば、親が亡くなったとき、子どもが複数おれば、男女、年長年少区別なく、それぞれ平等に相続をするのがよい、という考え方に結びつきます。

  この考え方からは、

  法律で決まったとおりに平等に分ける  → 「法定相続」

という制度がでてきます。


2  個人の意思の自由・自己決定権 を大切にする考え方

  一方で、「自分のことは自分で決める」という考え方は、自由主義社会の基本です。
  自分の財産は自分の好きなように使ってもよい、誰にあげてしまってもよい、というわけです。
  「死んだ後」のことも、自分の好きなようにしたい、この考えも尊重されます。

  「死んだ後」自分の財産をどうするかも自分の意思で決める → 「遺言」


という制度になります。 
   
 現在の相続制度は、上の2つの考え方、2つの制度の組み合わせになっています。

  つまり、

 遺言があれば   →  基本的に遺言に従う

 遺言がなければ →  法定相続(民法に書かれた割合に従う)


というわけです。

 その具体的な内容や、「相続」にはどんな事項が含まれるのか?については、次回以降に見ていきます。



                文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
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by hideki1975da | 2011-09-20 14:25

はじめに

 弁護士村上英樹です。

 弁護士を初めて10年余りになりました。
 日々事件に取り組み勉強することが多い仕事です。
 
 さて、今年は、ある団体からの御依頼を受け、「相続法」に関する講義(全5回)を担当することになりました。
 その準備のために、大学時代以来、久しぶりに、「相続法」の基本書の全体を通して読む機会に恵まれました。
 
 社会経験のない大学時代に勉強したときと比べ、遺産分割の調停などの経験をした上で、改めて勉強をすると、本を読んだときの感じ方が全く違うことが新鮮でした。

 そこで、「相続」について、具体的には、遺産分割とか遺言などについて、平たい、分かりやすい言葉で解説するブログを作ることにしました。

 少しずつ、内容を作っていきます。

 今回私が読んだ、弘文堂「相続法-第3版」(潮見佳男著)の内容に準拠し、できるだけ私の言葉を交えて、法律知識の全く無い人でも読める解説を心がけよう、と思っています。

 どうぞよろしくお願いします。




  弁護士村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
 
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by hideki1975da | 2011-09-20 14:08


誰にでもわかる平たい言葉で、相続法を解説するブログです。 神戸シーサイド法律事務所所属 弁護士村上英樹


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