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もくじ

★ 相続に関する法律について、できるだけ、平たい言葉で、法律家や法学部生以外の方にも理解しやすいようにまとめたサイトです。

  文章は、弁護士村上英樹(神戸シーサイド法律事務所)が書いています。
  

★ 次の項目から、必要なページ、興味関心のおありのページを選んで読んで下さい。

★ 参考図書は、弘文堂「相続法 第三版」潮見佳男著です。
   解説に用いられる「ケース」も、原則として、同著書に挙げられるケースを参考にしているものがほとんどです。そのまま引用したものもありますし、(理解をし易くするため)同著書を参考により単純なケースとして例示し解説したものもあります。

★ このサイトはあくまで法律の基本知識を書いたものであって、個別の法律相談、事例の解決について、答えを示すものではありません。
  もしも、御自身の相続問題等でお悩みの場合は、このサイトはあくまで参考にするにとどめ、弁護士に相談して下さい。

★ 右下の「検索」もご活用下さい。例えば、「相続の放棄」などのキーワードを入れれば、参考記事が出てきます。

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はじめに  

第1回 相続制度とは①~法定相続と遺言と  

第2回 相続制度とは②~「相続」の基本    

第3回 相続の開始~人の死亡         

第4回 相続人① 総論~胎児、代襲相続   

第5回 相続人② 相続人の種類         

第6回 相続人③ 同時死亡の推定      

第7回 相続資格について①~欠格と廃除   

第8回 相続資格について②~放棄と承認

第9回 相続人の不存在~相続財産管理人、特別縁故者など        

第10回 相続財産の包括承継

第11回 遺産共有

第12回 相続分の確定 ~ 法定相続分

第13回 特別受益

第14回 寄与分

第15回 遺産分割(1)

第16回 遺産分割(2)

第17回 遺言(1)~遺言とは

第18回 遺言(2)~遺言能力、有効・無効、撤回など

第19回 遺言(3)~遺言の執行、遺言執行者

第20回 遺言(4)~自筆証書遺言

第21回 遺言(5)~公正証書遺言など

第22回 遺言(6) ~遺贈

第23回 遺留分(1)~遺留分とは

第24回 遺留分(2)~遺留分権利者、割合など

第25回 遺留分(3)~遺留分の計算

第26回 遺留分(4)~遺留分減殺請求
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by hideki1975da | 2012-12-31 14:59

第26回 遺留分(4)~遺留分減殺請求

 今回は、法律上は遺留分があるとして、遺留分を持っている人は実際にはどのように権利を行使するのか?ということを解説します。


(1) 遺留分減殺請求権
① 遺言などによって遺留分が侵害されていることがあっても、そのままでは侵害行為(遺贈など)が無効になるわけではありません。

そこで、遺留分を侵害されている人は、遺留分減殺請求権を行使します。

  「減殺(げんさい)」というのは、遺留分を侵害する行為(遺贈や贈与など)について、全部又は一部の効果を無くすということです。

   そうしてはじめて、財産の取り戻しができる、というわけです。
  ↓            
(遺留分減殺請求権を行使すれば、効果として)
遺留分減殺請求権の範囲で、(遺留分を侵害していた)贈与・遺贈が効力を失います。
   そして、個別的遺留分に相当する財産権が、遺留分権利者に帰属していたものして扱われるようになります。
   少し分かりにくい言い方ですが、要するに「遺留分の分だけ財産が取り戻される」ということです。

② 具体例
【参考図書に挙げられているケース】
Aが死亡し,相続人は子X・Yである。
 Aは,死亡する6か月前に甲土地をYに贈与し,所有権移転登記を終ていた。ここにおいて,Xが遺留分減殺の意思表示をし,甲土地につきYに対して,自己への4分の1の共有持分移転登記をするように求めた。


  → この場合、遺留分減殺請求権行使の結果、Xには4分の1の共有持分(=物権)があることになります。


(2) 遺留分減殺請求権者
① 遺留分権利者およびその承継人

   遺留分権利者は、民法1028条により、「兄弟姉妹以外の相続人」であると定められています。

その承継人とは、遺留分権利者の相続人(遺留分権利者も亡くなってしまった場合)・包括受遺者などのことです。

② 遺留分権利者の債権者が遺留分減殺請求権を代位行使できるか?

【少し難しい論点です。関心のない人は飛ばして下さい。】

(判例・通説)
債権者が遺留分減殺請求権の行使をすることを否定する。
∵ 民法は侵害された遺留分を回復するかどうかを遺留分権利者自律的決定に委ねている。


(3) 遺留分減殺の方法
意思表示によります。
 必ずしも、訴えの方法による必要はありません。通常は、内容証明郵便等を送付して行います。

  意思表示により、「物権的効力」と言って、取り戻し財産は減殺請求権者の固有財産になる、という効力が発生します。
 

(4) 減殺の限度
遺留分を保全するのに必要な限度で減殺できることになります。
  具体的には以下の計算によります。

 = 【個別的遺留分額】-(【遺留分減殺請求権者が得た特別受益】+【遺留分減殺請求権者が実際に相続した額】)

(5) 減殺対象となる行為と減殺の順序
① 減殺対象となる行為
遺贈
 +
1030条 一定範囲の贈与

② 減殺の順序1 - 贈与と遺贈
  まず遺贈から。
  それでも足りないときにはじめて贈与。

【参考図書に挙げられているケース】
Aには妻Wと子X・Yがいる。
 Aは,40年前にYが婚姻する際の持参金として500万円を渡し(相続開始時点での評価額は3,000万円),また,公正証書遺言で「甲土地を弟Dに譲る」と記した(相続開始時点での評価額1,000万円)。
Aが死亡し,甲土地を除く遺産総額は2,000万円であった。



 このケースでは、

具体的相続分  W:X:Y=2:1:0(Yは超過特別受益を受けている。
相続財産2000万円に対しては、
W 1334万円    ※1
X  667万円    ※2
Y    0円

個別的遺留分

基礎財産

 2000万円  +  1000万円    +   3000万円

現存財産(金)     現存財産(土地)        贈与

=6000万円



総体的遺留分 は 基礎財産の(1/2)

個別的遺留分の割合及び額は  
   W 割合( 1/4 ) 額( 1500万 )円  ※3
   X 割合( 1/8 ) 額(  750万 )円  ※4 
   Y 割合( 1/8 ) 額(  750万 )円
      
各自は遺留分を害されているか?

 遺留分を害されている人は、WとXです。Yさんは、既に3000万円相当の贈与を受けています。
             

 害されている金額は、

   W   ※1と※3の差   166万円
   X   ※2と※4の差    83万円     


 その結果、WとXが、遺留分減殺請求権を行使できることになります。

まず、Dに対して権利行使をして、財産を取り戻そうとすべきということになります。(上で説明したとおり、遺贈と贈与が両方ある場合は、遺贈から先に遺留分減殺すべきだからです。)
 
 それでもし足りなければYに対して遺留分減殺請求することになります。

 ③ 減殺の順序2-遺贈の減殺
遺贈が数個ある場合
→ 遺言者が遺留分減殺の順序を指定した場合は、それに従います。
      それがない場合は、減殺額を「遺贈の目的の価額」の割合に応じて割り付けます。

【参考図書に挙げられているケース】
Aには,妻Wと子X・Yがいる。
 Aは,「自分の遺産から5,000万円をD宗教法人に寄付し,2,000万円K市に寄付し,残りを相続人らで分配せよ」との公正証書遺言を残し死亡した。Aにはめぼしい残余財産がなかったため,W・X・Yすべの相続人の遺留分が侵害されていることが判明した。


 このケース それぞれの個別的遺留分
W  1/4   1750万円           
X  1/8    875万円
Y  1/8    875万円

 減殺対象となる2つの遺贈の価額割合(5:2)で支払いを求る。
対D          対K
W     1250万円       500万円
 
  X      625万円       250万円

Y      625万円       250万円

④ 減殺の順序3-贈与の減殺
数個の贈与の減殺は、次のような順序で行います。
  相続開始時に近いものから減殺し、順次に遠いものを減殺する(民法1035条)。    同時の贈与については、贈与財産の価額に応じて減殺する。
  
(6) 減殺請求の相手方
減殺対象である処分行為により直接に利益を得た受遺者・受贈者、その包承継人(相続人など)及び悪意の特定承継人を相手に遺留分減殺請求することになります。

文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
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by hideki1975da | 2012-03-21 19:28

第25回 遺留分(3)~遺留分の計算

 今回は、遺留分の計算についてお話しします。

 「遺留分を算定するときの基礎財産」についてのお話しです。
 この「基礎財産」の金額に、前回お話しした遺留分の割合(たとえば、妻と子2人の場合、子の遺留分は、1/2*1/4=1/8など)をかけて、個人の遺留分の金額が決まります。



(1) 基礎財産とは?
 遺留分率をもとに相続人各自の遺留分を算定するときの基礎となる財産のことで、その全体の価額が問題になります。

(2) 基礎財産の確定
① 基本的算定の公式は次の通りです。(民法1029条1項)

 基礎財産 = 【被相続人が相続開始時点で有していた財産】
+ 【贈与した財産】
-【相続債務】

    ※ 「みなし相続財産」「具体的相続分」の算定との違いは次の通りです。
ⅰ 「寄与分」は考慮されません。
ⅱ 「相続債務」が控除されます。
ⅲ 組み込まれる贈与財産に違いがあるし、対象となる受贈者は共同相続人に限られない              (←少し細かいです。ややこしければ、気にしないで下さい。)

② 基礎財産にあたるかどうか?

 ★ 基礎財産にあたるものが大きいほど、それに遺留分の割合をかけて計算される金額(実際に請求できる遺留分額)も大きくなります。なので、遺留分権利者に有利になります。

(a) 「被相続人が相続開始時点で有していた財産」とは、相続人が承継した積極財産(+の財産。不動産、預金、貸金、現金などなど)のことをいいます。

(b) 条件付権利・存続期間が不確定な権利を何円と評価するかは、家庭裁判所が鑑定した鑑定人の評価に従う(民法1029条2項)。


(c) 遺贈された目的物を基礎財産に含めて計算します。

(d) 生命保険金の処理 
【参考図書にあげられているケース】
Aには妻Wと子X・Yがいる。
Aは10年来,Fと不倫の関係にある。
Aは,P生命保険会社との間で死亡保険金1億円の保険契約に加入し,受取人の欄に「F」と書いた。その後にAが死亡した。

生命保険金を、遺留分を計算するときの基礎財産に含めて計算するかどうかについて、学説は分かれています。
判例は否定しています(最高裁判決平成14年11月5日。1030条による「贈与」もしくは「遺贈」に準じるものとはいえない、としています)。


 (e) 死亡退職金は、基礎財産の計算に入れないのが相当と考えられます。
∵ 死亡退職金は、支給を受ける遺族の生活保障を目的としたものだからです。

③ 贈与財産の加算のしかたについて
民法1030条に定められています。
(a) 原則 相続開始前1年間にされた贈与に限られる、とされています。

(b) 例外その1
遺留分権利者に損害を加えることを知ってされた贈与 も含まれる、とされています。
(この場合、相続開始の1年よりも前になされたものも含まれるということです。)

【参考図書に挙げられているケース】
Aには妻Wと子X・Yがおり,かつ両親P・Qも健在である。
Aは3年前に,Fと不倫の関係におちいり,もし自分に万一のことがあったら家族が将来経済的に困窮することを承知のうえで,自分の預金4,000万円を引き出し,これをFに贈与した。その後にAが死亡した。

 ★ この場合、Aさんは「家族が将来的に経済的に困窮することを承知のうえで」Fに金銭を贈与したので、「遺留分権利者に損害を加えることを知ってされた贈与」にあたり、この贈与額を遺留分を計算する基礎の財産に含めて計算しなければならない、というわけです。
 この贈与額が計算に入ることによって、その分、遺留分権利者(W,X,Y)が請求できる遺留分の金額が大きくなります。
 

(c) 例外その2
Ⅰ 基礎財産確定にあたっての特別受益の持ち戻し

【参考図書にあげられているケース】
Aには,妻Wと子X・Yがいる。
Aは,40年前にXが結婚する際に,持参金として300万円(相続時の価値にして3,200万円)をXに持たせた。
Aが死亡したが,遺産としては800万円ほどしか存在していない。


民法1044条により、遺留分についても903条(特別受益の規定)が準用されています。

→ 共同相続人の1人に対し婚姻・養子縁組のため、または生計の資本としてされた贈与については、相続開始1年前であるかどうかとは関係なく、また、損害を加えることの認識があってもなくても、遺留分算定の基礎財産に含めて計算します。

Ⅱ 持ち戻し免除と遺留分減殺請求権

  持ち戻し免除は、下のケースのように、亡くなった人が誰かに金銭を贈与するなどしたうえで、さらに、「その贈与は、遺産分割の時に、持ち戻して計算しなくて良い」と意思表示することです。

 【参考図書に挙げられているケース】
Aには,妻Wと子X・Y・Zがいる。
Aは,公認会計士試験を受験し続けているZに対して大学の学費・予備校の受講料,下宿代などを5年にわたって援助しているが,Zはいまだ合格通知を得ていない。その金額は既に1,000万円を超えている。
過労で倒れたAは,「Zの将来に期待して援助してやっているのだから,自分に何かのことがあっても,遺産を分配するときには,Zのために支払ってやった費用はけっして考慮してはならぬ」との遺言を残して死亡した。


民法903条3項で、持ち戻し免除の意思表示については、「遺留分に関する規定に違反しない範囲内で」だけ有効とされています。
 逆に言えば、遺留分の規定に反する結果になってはならないと解釈できます。
判例は、持ち戻し免除の意思表示をしても、遺留分を算定する場合の基礎財産に算入すべきである(最判平成10年3月24日)としています。

 (d) 例外その3
不相当な対価でされた有償行為(極端な場合、価値のある土地を「1円」で売った、など)
→ 正当な価額との差額が贈与として基礎財産に算入される、と定められています。
(1039条前段)

④ 遺産債務は控除する。

  借金は遺留分の全体金額から差し引く、ということです。

(3) 基礎財産の評価時期と評価方法
 ① 評価時期は相続開始時です。

② 評価方法
(a) 目的物が相続開始後に増減している場合には、相続開始時(被相続人が死亡したとき)の「原状」で評価する。
例 家屋のリフォームがあった場合
(b) 相続開始時点(被相続人が死亡したとき)を基準に価額評価(貨幣価値も相続開始時に換算)します。


(c) 債権
名目額(額面額)ではなく、債務者の資力や担保の有無を考慮し、取引価額を算定します。
    ですので、全く返してもらえる見込みのない貸金などは「0円」になります。

文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
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by hideki1975da | 2012-03-09 18:27

第23回 遺留分(1)~遺留分とは

前回まで「遺言」の話をしました。
 「遺言」は、人の最終意思をその人の死後にまで影響させるもので、「遺言」によって、自分の財産は全て長男に譲る、等のことを書けば、法定相続分は複数の子に平等の割合とされていても、遺言は遺言で効力を持つ、というものでした。

 しかし、「遺言」をしたとしても奪うことの出来ない、相続人の権利というのがあります。
 「長男に財産を全部譲る」と親に遺言をされた場合の、次男の権利は?という話です。
 それが今回からお話しする「遺留分」の話です。


1 遺留分制度の基本
(1) 遺留分とは
「被相続人の財産の中で、法律上その取得が一定の相続人に留保されていて、被相続人による自由な処分(贈与・遺贈)に対して制限が加えられている持分的利益」とされています。

 わかりにくいですが、「贈与」や「遺言」をしても、奪うことの出来ない、相続人の権利がある。それは、相続財産の何割かの持分ということになる、ということです。

これは、被相続人と家族であった者に、一定の生活利益を保障をしようという意図で定められている制度です。

ただし、その割合などが法定相続分とは異なります。



【参考図書に挙げられているケース】
Aが死亡し,相続人は妻Wと子X・Y・Zである。
Aは,「甲土地をD宗教法人に寄付する」との遺言を残していた。甲土地の価値は2億円であり,これを除くAの遺産は300万円ほどである。


例えば、この場合の遺留分は、WXYZそれぞれについて、法定相続分の1/2で、

        Wさんは       1/2*1/2=1/4
XYZ さんは 1/6*1/2=1/12ずつ
となります。(ここでいう「1/2」などの遺留分の割合については次回以降に解説します。)


(2) 遺留分減殺請求
上のケースの場合、Dへの遺贈はW・X・Y・Zの遺留分を侵害していることになります(詳細、計算は次回以降に解説します)。
しかし、遺留分を侵害しても、Dへの遺贈そのものは無効ではありません。有効な法律行為です。

では、Wらの遺留分を守るための方法はなんでしょう?

それは、遺留分減殺請求権を行使する、ということです。
  遺留分減殺請求権を行使するかしないかはWらの自由です。

(3) 遺留分の放棄
① 相続開始前の遺留分の放棄と家庭裁判所の許可

「遺留分の放棄」は出来ますが、これを自由に許すと弊害を生じるおそれがあります。
というのは、被相続人や他の共同相続人らから圧迫されて、立場の弱い相続人(遺留分権利者)が予め遺留分権を放棄するよう強要される恐れがあります。



そこで、相続開始前の遺留分の放棄については、家庭裁判所の許可が必要とされています(民法1043条1項)。

② ただし、相続開始後の遺留分の放棄については、家庭裁判所の許可は要らず、自由にできるとされています。
 相続開始後の場合は、①でいう恐れが小さいということと理解されますが、果たしてそれでよいかどうかについては異論もあります。


③ 遺留分放棄の効果
ある遺留分権利者が遺留分を放棄したからといって、他の共同相続人の遺留分が増加することはありません(民法1043条2項)。


④ 遺留分侵害と減殺が問題となる場面
遺贈、生前贈与、死因贈与、相続分指定などがなされたことによって、相続人の誰かの遺留分が侵害される場合です。

⑤ 遺留分制度の例外として新しい法律ができています。
「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(2009施行)です。

これは、一定の要件の下で、相続人全員の合意によって、後継者が先代経営者からの贈与等により取得した株式等について、遺留分を算定するための財産の価額に算入しないことができるという制度です。

 中小企業の株について、誰かが先代の後を継いで取得するときに、それについて遺留分を計算するなどのことをすると、経営の承継がスムーズに行かず問題が生じる、という事態を避ける意味です。



★ 以上、今回は、遺留分制度の概要の話です。
  具体的な計算については、次回以降にみていきます。
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by hideki1975da | 2012-03-05 19:12

第24回 遺留分(2)~遺留分の権利者、割合など

 前回は、遺留分の制度とは?という基本をお話ししました。

 今回は、「遺留分は誰がもっているのか?」と、「遺留分の割合はどうなっているのか?」について解説します。

1 遺留分権利者

(1) 遺留分を有しているのは「兄弟姉妹以外の相続人」です。
 つまり、配偶者、子、直系尊属(父母、祖父母など)です。兄弟姉妹には遺留分はありません。

(2) 相続欠格者・被廃除者・相続放棄者には遺留分権はない。

(3) 胎児も、生きて生まれれば、子としての遺留分権を持つとされています(民法886条)。

(4) 子の代襲相続人(子が既になくなっている場合の孫など)も遺留分権があります。


2 遺留分の割合はどうなっているのか?

(1) 総体的遺留分
(遺留分権利者全体に留保される割合)

  分かりにくいですが、遺産全体の何割が「遺留分」(誰の遺留分かは別として、誰かの遺留分という意味)になるか、という割合は次のように決まっています。

民法1028条

     直系尊属(父母、祖父母など)のみが相続人である場合
                    -被相続人の財産の1/3が遺留分

それ以外の場合(妻や子がいる場合、こちらのほうがケースとして多い)
                    -被相続人の財産の1/2が遺留分

(2) 個別的遺留分

遺留分権利者個々人に留保された相続財産上の持分的割合はつぎのようになります。
  参考図書に載っている例を引用して説明します。 

【参考図書に載っているケース 引用】
Aには妻Wと子X・Y・Zがいる。 F
X・YはAの嫡出子であるが,Zは 遺贈 A─┬─ W
婚外子である(Aによる認知ずみ)。 │
Aは,妻子と離れ,F女(Zの母で ┌┴─┐ 
はない)のもとに走り,「遺産の全部を Z │ │
Fに譲る」との遺言を残して死亡した。 婚外子 X Y
(認知)
  
Q1 この場合の遺留分権利者は?
             WとZ、X、Yです。


Q2 総体的遺留分は?
           妻や子がいるケースなので、相続財産全体の1/2です。


Q3 それぞれの個別的遺留分は?

           Q2の「1/2」をさらに、法定相続分の割合で分けます。

          法定相続分はW1/2 XとYは1/5ずつ、 Zは1/10です。
          (憲法の禁止する差別ではないか?という問題がありますが、民法の規定では、婚外子は嫡出子の1/2の相続分となっています)。

       その結果、

          Wの遺留分 1/2 × 1/2 = 1/4
          XとYの遺留分それぞれ    
            1/2 × 1/5 = 1/10
          Zの遺留分
                1/2 × 1/10= 1/20

       となります(どれも相続財産に対する割合)。   

(3) 寄与分は考慮されないとされています。

(4) 遺留分を、遺言などによって指定することは認められません。

文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
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by hideki1975da | 2012-03-02 17:56

第22回 遺言(6)~遺贈

 今回は、「遺贈」について解説します。
 「遺言」によって財産を「贈る」、という意味にとっていただければよいです。

 今回は少し細かな記述が多いです。特に関心がない方は、読み飛ばして頂いて結構です。
 
1 遺贈の意義

 遺贈は、被相続人が遺言によって他人(受遺者)に自己の財産を与える処分行為(964条)であるとされています。
 遺贈と似たものに「死因贈与」というものがあります。法学部生など以外の方は、特に自分のことで問題にぶつからなければ深く考えなくても良いですが、違いを図解しますと、次の通りです。

遺贈        ≠     死因贈与

単独行為 契約
要式行為 不要式行為

2 遺贈の種類
(1) 特定遺贈と包括遺贈

 遺贈には、特定の財産を譲る「特定遺贈」と、財産の何割か(または全部)をひとまとめにして譲る「包括遺贈」という区別があります。

① 特定遺贈

例 「甲不動産をXに譲る。」
「自分の保有するA社の株式1万株のうち、1000株をXに譲る。」


② 包括遺贈
(a) 包括遺贈とは、遺産の全部または一定割合で示された部分の遺産を受遺者に与える処分行為のことをいいます。

  例「自分の財産全部をXに譲る。」
「自分の財産の3分の2をX財団に寄付する。」

 (b) 民法990条によれば、「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。」とされています。
 その意味は「包括遺贈」を受けた人は、たとえば、遺産の2分の1を相続した相続人と同じように、遺産のある割合をひとまとめにして譲り受けているので、その意味では相続人に近い立場にあるから、相続人同様の立場に立つ、ということです。

③ 包括遺贈を受ける地位にある人(包括受遺者)が「相続人」と同様の扱いを受ける場合には、具体的には次のようなことになります。
(a) 「相続人」と同様に、遺贈について、放棄、単純承認、限定承認ができます。いらない、と思えば放棄できるというわけです。

(b) 遺産分割などについて包括受遺者は、相続人と同様に扱われます。

   ですので、相続人ではない人が包括受遺者になっているとき、相続人とともに、遺産分割協議に参加することになります。
 そして、包括受遺者がいるときには、包括受遺者も一緒に遺産分割をするのでなければ(包括受遺者を外して遺産分割してしまったりすると)、遺産分割は無効になってしまいます。


 (c) なお包括遺贈についても遺留分減殺請求の対象となります。

④ 包括受遺者は原則として「相続人」と同じ扱いといっても、次のような点では、「相続人」と異なる扱いになります。(ややこしかったら読み飛ばして下さい。)
(a) 法人は相続人になれないが、包括受遺者になれる。
(b) 包括受遺者には代襲制度はない。
(c) 包括受遺者に遺留分権はない。
(d) 割合的包括遺贈の場合、受遺分は固定される。他の共同相続人に放棄があっても、受遺分は増加しない。
(e) 包括遺贈の場合に、遺贈される財産中に不動産が含まれているとき、遺贈による登記は共同申請となるのに対して、相続による登記では単独申請で手続がおこなわわれる。


(2) 条件つき遺贈
遺贈には、停止条件や解除条件をつけることができます。

【参考図書に挙げられているケース】
畜産業を専業とするAは病に倒れた後に自筆証書遺言を残し,その中で,「長男B(当時20歳の畜産学部学生)に甲土地ほか畜産施設すべてを譲り渡すが,Bが畜産業を継がなかったときや途中で経営を断念したときには,甲土地ほかこれらの施設を売却し,売買代金を各自の相続分にしたがって分配せよ」と記し,その直後に死亡した。


【上同・ケース】
Aは,公正証書遺言を残し,その中で,「自分の所有する乙建物を妻Wに譲る。妻Wが自分よりも前に,または自分と同時に死亡したときには,乙建物をDに譲る」と記していた。



(3) 負担つき遺贈(1027条)
  
  遺贈では、財産を譲る代わりに、一定の負担も負わせる、という風にすることができます。

① 負担の内容は遺贈される対象と関係が無くてもかまいません。
② 負担が履行されることによって利益を受ける者(受益者)は、相続人であっても良いし、第三者であっても良いとされています。

【参考図書に挙げられているケース】
個人医院を経営するAは,公正証書遺言を残し,その中で,「病院の施設全部をD(自分の子Xの夫である医師)に譲るが,Dは私の妻Wが存命中,その生活の一切について面倒をみること」と記した。


③ 負担の額が遺贈される対象の価額を上回るときには、受遺者は、その対象の価額を上限として負担の履行義務が生じます(1002条1項)。
 要するに、自分がもらえる分を限度として負担を負えばよい、ということになります。
 「負担付き遺贈」の場合に負担のほうが大きくなってしまわないように、という条文です。

【参考図書に挙げられているケース】
Aは,自筆証書遺言を残し,その中で,「遺産の中から500万円をDに譲るが,Dは私の遺稿集として私が書き綴った俳句を集めた句集を出版せよ」と記した。
Aの死後,Dは,句集の出版に奔走したが,Aが欲したであろうと考えられる品質の句集だと500万円ではとうてい足りず,紙の質を落とし印刷レベルを下げたならば,ある出版社において670万円で引き受けてくれることがわかった。

→この場合は、Dとしては、遺贈される500万円の範囲で「負担」である句集の出版をすればよい、ということになります。


④ 受遺者が負担を履行しない場合、相続人は、相当の期間を定めて催告をし、その期間が過ぎたときに、遺贈の取消を家庭裁判所に請求することが出来ます(1027条)。


3 遺贈の当事者

 ここから、遺贈に関する登場人物と、それぞれの権利関係について説明します。

(1) 遺贈者
 遺贈をした被相続人(死亡した人)です。

(2) 遺贈義務者
相続人(不存在の場合は相続財産法人)
遺言執行者が代理人として行為する場合もあります。

例えば、遺贈による不動産登記をする場合、受遺者(登記権利者)と相続人(登記義務者)との共同申請による必要があります。
  
(3) 受遺者
  遺贈によって相続財産を与えられた者
① 相続人であっても、相続人以外でもかまいません。
② 自然人に限らず、法人であってもかまいません。
③ 受遺者は、遺言の効力が発生した時点で存在している必要があります(「遺贈」に関しては、胎児は既に生まれたものとみなされます。民法965条。)
④ 遺言の効力が発生する以前に受遺者が死亡したとき
 → 遺贈は無効となります。(994条1項)
⑤ 停止条件付遺贈で、停止条件が成就する前に受遺者が死亡したとき
 → 遺言者が遺言に別段の意思(例 遺贈の再指定)を表示しているのでなければ、遺贈は無効となります(994条2項)
⑥ 受遺者は遺贈を放棄することが出来るます。
⑦ 「受遺欠格」(965条は、相続欠格に関する891条を準用している。)という制度があります。


4 遺贈の承認・放棄
① 遺贈の放棄
(a) 特定遺贈の場合

遺贈を放棄できます(986条1項)。

(b) 包括遺贈の場合

【参考図書に挙げられているケース】
Aには,妻Wと子X・Yがいる。Aは「自分の遺産の3分の2をYに譲る」との自筆証書遺言を残して死亡した。
Yは,この遺言の内容を知ったが,自分だけが多くを受け取るのは好ましくないと考えている。

包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する(990条)ので
→ 915条など  相続の承認・放棄と同じルールが適用され、それに従い「放棄」できます。

② 放棄の時期(特定遺贈の場合)
(a) いつでもできる。時期制限無し。
(b) ただし、相続人や利害関係人から、受遺者への催告権。
相当期間を定めて催告し、返答がなければ、遺贈を承認したものとみなされます(987条)。
これは法的関係の安定のため、遺贈を承認するか放棄するかを早く決めさせることができようになっているのです。

③ 放棄の方式(特定遺贈の場合)
  単独行為。
  遺贈義務者(相続人)または遺言執行者に対する意思表示によってできます。
  家裁での申述は不要です。

④ 放棄の効果(特定遺贈の場合)
(a) 放棄は、死亡時点に遡って効力を生じます。
(b) 「負担付遺贈」の放棄の効果は次の通りです。
  
原則として、負担の受益者がみずから受遺者になることができます(1002条2項)。

【参考図書で挙げられているケース】
Aは,「自分の経営する甲医院を,自分の死後は,長女Xの夫である医師Dに譲るが,Dは,Xとともに自分の妻Wを終生介護し生活の面倒をみること」との公正証書遺言を残して死亡した。
しかし,Dは,この遺贈を放棄した。


→ここでは、Dが遺贈を放棄した結果、甲医院はW(負担の受益者)が取得することになります。

(c) 遺贈の承認・放棄前の受遺者の死亡

【参考図書で挙げられているケース】
Aは「甲土地をDに譲る」との遺言を残して死亡した。
ところが,A死亡の直後に,Dも急死し,妻W,子X・Y・ZがDを相続した。


受遺者であったDの相続人であるWXYZ各自が相続分に従い、単独で、自分の相続分について遺贈の承認・放棄をすることができる(988条)ことになります。

(d) 遺贈の承認・放棄は原則として撤回できません。


 5 遺贈が無効になる場合、失効する場合。その場合、遺贈目的物はどうなるのか?
   
   遺贈の無効   遺言の方式違反など
           遺言者が死亡する以前に受遺者が死亡した場合
           条件成就前に受遺者が死亡した場合

遺贈の失効 遺贈の放棄による

→ これらの場合、受遺者が受けるべきであった財産は、遺言者が別段の意思を遺言中で表示していた場合を除き、相続人に帰属する(995条)ことになります。

【参考図書に挙げられているケース】
Aには,妻Wと子X・Yがいるが,現在はWらのもとを離れ,Fと同居している。Aは,「遺産の5分の3をFに譲る」との公正証書遺言を残して死亡した(割合的包括遺贈)。
しかし,FはA死亡後2週間たって,遺贈を放棄する旨の意思表示を家庭裁判所で行った。


この場合、Fが受けるはずであった5分の3の遺産割合は、
( 2:1:1)の割合で、W,X、Yに帰属する。
その結果、この遺産割合は、Wに(10分の3)、XとYにそれぞれ(20分の3)帰属する。


 6 遺贈と権利変動
 特定物の遺贈は、遺贈の効力が発生すると同時に目的物の所有権が受遺者に移転する(判例)とされています。
 不特定物の場合は、対象物を特定するという遺贈義務者の行為がなければ移転しない(遺贈の効力が発生した時点では、未だに所有権は移転していない)とされています。

 遺贈による権利変動を「第三者」に対しても主張したい場合は、対抗要件(不動産の場合は登記)が必要です。



7 遺贈目的物の滅失等と物上代位(999条1項)

  遺贈の目的物が、形を変えてしまった場合には、一定の場合、形を変えた後のものが代わりに遺贈されることがあります。

【参考図書に挙げられているケース】
Aは,「甲土地をDに譲る」との公正証書遺言を残して死亡した。
相続人は,妻Wと子X・Yである。ところが,遺言書作成後,甲土地は駅前再開発計画に組み込まれ,補償金4,500万円でK市に土地収用されることとなった。
補償金はいまだ支払われていない。

(この場合)
  補償金請求権を遺贈の対象にしたものと推定する(999条1項)ことになります。
   なので、Dさんは、甲土地はもらえませんが、補償金を市に請求できることになります。 

文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
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by hideki1975da | 2012-03-02 17:45

第21回 遺言(5)~公正証書遺言など

 今回は、遺言のうち、公正証書遺言と秘密証書遺言について御説明します。


1 公正証書とは
遺言者が遺言の内容を公証人に伝え、公証人がこれを筆記して公正証書による遺言書を作成する方式の遺言(969条)です。

 公正証書遺言にするメリットは、自筆証書遺言と違って、方式不備によって無効になる恐れがほとんどないことです。というのは、素人が自分で遺言書を作成するのではなく、公証人が要式に従って作成するものだからです。
 また、遺言そのものを公証役場で保管してもらえることや、検認手続がいらないこともメリットにあげられます。

ただし、公証人に支払う手数料が必要になります。

2 公正証書遺言の方式要件は次の通りです。

(a) 証人2人以上の立会いがあること
(b) 遺言者が遺言の趣旨を公証人に「口授」すること
(c) 公証人が、遺言者の「口授」を筆記すること
(d) 公証人が、遺言者及び証人に、読み聞かせ又は閲覧させること
(e) 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと
(f) 公証人が、その証書は以上の方式に従って作ったものである旨を付記して、署名押印すること

3 「口授」と手話通訳、筆談  H11年の法改正
「口授」とは、遺言の内容を遺言者が公証人に直接に口頭で伝えることをいいます。

法改正以前は、口のきけない者が排除されているという問題がありました。

H11年の法改正で(「口がきけない者」や「耳の聞こえない者」について)「口授」「読み聞かせ」について、手話通訳や筆談の方法が取れるようになりました。 
 バリアフリーが進んだわけです。

4 「口授」の順序
(a) 民法が本来予定している「口授」のイメージは次のようなものだと思われます。
Ⅰ 遺言者→公証人 口頭
Ⅱ 公証人 筆記
Ⅲ 読み聞かせ
Ⅳ 関係者承認、署名押印

(b) ただし、 判例は、上記の順序だけでなく、もう少し緩やかに解している。

 たとえば、公証人が、遺言をしようとしている人から希望する内容を聴き取って、公証人が文案を作成して「これでよいか」と尋ね、遺言者が「これでよい」と答え、関係者が署名押印して作成する、というものも有効であるとされています。



(c) しかし次のような場合は、「口授」の要件を満たさないとしています。無効になります。

・ 言語をもって陳述することなく、たんに肯定または否定の挙動を示したに過ぎない場合。
 ・ ただうなづくのみの場合。

4  証人・立会人の欠格事由

  公正証書には、証人2人以上の立会いが必要とされていますが、次のような人は証人になれません。
(a) 未成年者
(b) (遺言作成時の)推定相続人・受遺者、ならびに、これらの者の配偶者・直系血族
(c) 公証人の配偶者、4親等内の親族、書記および使用人

ここに挙げられた欠格者が証人として立ち会って行われた公正証書遺言は、原則として無効です。
  ここに挙げられていない人(たとえば、遺言文章作成に関わった弁護士や弁護士事務所事務員など)は証人になるこができます。
     

5 秘密証書遺言
① 秘密証書遺言とは
 
 遺言者が遺言内容を秘密にしたうで遺言書を作成したうえで、封印をした遺言証書の存在を明らかにする-しかも、この過程に公証人を関与させる-ことを目的として行われる遺言(970条)です。
             
メリットは次のようなことです。  
   1) 自書能力がなくても遺言書を作成できる(ワープロ可、他人に書いてもらうことも可)
2) 遺言書の「存在」は明らかに出来る(死後に発見されないとか、隠匿・廃棄される危険は小)
3) 遺言の「内容」は秘密にできる

デメリットは次のようなことです。
   1) 遺言をした事実は明らかになってしまう
2) 遺言書作成の費用がかかる
3) 無効になるおそれは公正証書よりは大きい
4) (公正証書と違って)裁判所の検認は必要

② 方式要件は次のとおりです。
(a) 遺言者が遺言内容の記載された証書に、署名し、印を押すこと(970条1項1号)
内容は自書の必要はありません。ワープロ、点字機、他人に書いてもらうというのもOKです。
(b) 遺言者がその証書を封じ、証書に用いた印章を用いて、これに封印をすること(同条1項2号。封紙への封印。)

(c) 遺言者が、公証人1人および証人2人以上の前に封書を提出して、事故の遺言書である旨と、その筆者の住所・氏名を「申述」すること(同条1項3号)



6  特別方式の遺言の各種  (参考までに)

  ※ 普通の遺言ができない緊急事態にだけ行える特別な方式の遺言があります。船などに乗っていて遭難した場合に急遽遺言を作る必要があるなどの場合です。

[特殊性]
「普通の方式」(自筆証書、公正証書、秘密証書)によって、遺言をすることにができるようになった時から6か月生存するときに、当然に失効する(983条)。

危急時遺言          一般危急時遺言 976条
                 船舶遭難者遺言 979条

  隔絶時遺言          伝染病隔離者遺言 977条
                 在船者遺言    978条      

          
文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
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by hideki1975da | 2012-02-23 18:22

第20回 遺言(4)~自筆証書遺言

今回は、遺言にはどのような種類のものがあるか、について説明し、自筆証書遺言について具体的に説明します。

1 遺言の色々
(1) 分類

  次のような分類になります。通常、私たちが関係するのは「普通方式の遺言」で、自筆証書遺言と公正証書遺言とが多いです。

普通方式の遺言   自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言

特別方式の遺言 死亡危急者遺言、伝染病隔離者遺言、在船者遺言
          船舶遭難者遺言

2 自筆証書遺言
① 自筆証書遺言とは?
遺言者が、遺言書の本文、日付及び氏名を自分で書き(自書)、押印して作成する方式の遺言(民法968条)です。
  自分で作成できるので、手軽といえば手軽です。メリットとしては、誰にも知られず作成できることや、費用がかからないことが挙げられます。
 しかし、一方で、遺言は法律が要求する方式を満たしていなければそれだけで無効になってしまいますので、自分で作成する自筆証書遺言の場合には、方式不備で無効とされる危険性が大きいというデメリットがあります。
 また、紛失・偽造・変造等の危険も、後に説明する公正証書遺言に比べると大きいといえます。
なお、自筆証書遺言の場合は、遺言者の死後には、家庭裁判所による検認手続が必要になります(検認手続について「第19回」)。


② 方式要件
  
  上で説明したとおり、自筆証書遺言は、法律が要求する方式に従って作成される必要があります。方式に反する場合は、基本的に無効になってしまいます。
 その方式の要件とは次のことです。

(a) 自書
全文を自分で書くことが必要です。ワープロ打ちではダメです。

「自書」の要件に関連して判例上問題となったものとしては、いわゆる「添え手」遺言(最判昭和62年10月8日)があります。
 つまり、遺言者本人が手で書いているのですが、(遺言者が弱っているなどの事情により)他人が手を添えて書いた場合はどうなるか?という問題です。
上記の昭和62年の判例は、条件つきで許容しています。遺言をしたときの状況からして、他人の意思が介入した形跡がないかどうかで判断するということです。もちろん、添え手により他人の意思が介入した形跡がある場合は、遺言が無効になる、ということです。
 この判断は非常に微妙な部分により決まると思いますので、もしも、遺言をしようとする人が、他人に手を添えてもらわなければ満足に書けないという場合は、下に紹介する「公正証書遺言」にするようにお勧めします。(そうでなければ、「添え手」により無効になってしまうおそれがあります。)
  


(b) 日付
日付のない遺言は無効です。年月日まで客観的に特定できなければなりません。

○ 昭和52年1月7日、「自分の80歳の誕生日」、「自分の定年退職の日」

× 「平成18年5月吉日」 
※「吉日」では何日か特定できないのでダメです。

(c) 氏名
遺言者が特定できればよいです(ペンネームでもよいです。氏・名の一方しか書かなくても特定できておればよいです。)

○ 杉本高文、明石屋さんま、さんま

(d) 押印
実印でなくても構いません。指印でも構いません。


③ 自筆証書遺言における加除訂正
  
ⅰ 遺言者がその場所を指示し
ⅱ 変更した旨を附記
ⅲ 特にこれを署名
ⅳ 変更場所に印

でなければ、効力がない(968条2項)とされています。法律の規定は、この点とても厳格です。

問題としては、このような加除・訂正の方式を満たさないときに、加除・訂正だけが無効で、もとの内容の遺言が有効に成立するのか、それとも、もとの字句も含め遺言全体が無効となるのかが、法律の条文上ははっきりせず、どういう風に考えるべきか?ということがあります。

【参考文献に挙げられているケース】
90歳のAは自筆証書遺言を書き,その際に,「①自分の家と田畑は,これを孫のBに譲る。②自分の貯金は娘のSに譲る。③Kを自分の子と認知する。」とあったもとの文の「田畑」にバツ印をつけて「土地」に直し,その横に署名の箇所に押印したのと同じ印鑑で押印した。Aが居住する自己所有建物の敷地も田畑とともにAの所有である。


この点、現在のところ判例などの上でも明確に結論は出ていないようですが、加除・訂正が「方式」に反して無効であるとして、そのこととの関連性の大きい項目(①②)はもとの字句も含めて無効、関連性の小さい項目(③)については有効となる可能性が高いと考えられます。

文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
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by hideki1975da | 2012-02-21 17:04

第19回 遺言(3)~遺言の執行、遺言執行者

 今回は、実際に作成された遺言が,遺言者の死後、どのようにして実現されてゆくのか、ということを説明します。

 遺言の「検認」の話と、「遺言執行者」についての話です。

1 遺言の執行

(1) 検認手続と遺言書の開封

「遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。」(1004条1項)

とされています。

 遺言書の保管者または発見者は、家裁に検認を請求する必要がある、というわけです。
 この「検認」とはなんでしょうか。 

① 検認とは、後日に備えて、現状を保全する手続です。

② 検認の手続 
  被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に対して、検認を申し立てて行います。
  家庭裁判所では、関係者に聴き取りの上、「遺言書検認調書」を作成します。

  検認は、遺言書の有効・無効とか、偽造されているかどうかなどを決める手続ではなく、あくまで、現状を保全する手続ですので、検認の手続内で、関係者が「これは故人の筆跡ではない」等のことを言った場合、そのことを記録はしてくれますが、事実、故人の筆跡だったかそうでなかったかを判断することはありません。(この点は、争いがあれば、後に遺言無効確認の訴訟などで決着をつけることになります。)

 ③ 遺言書の開封
  (封印のある遺言書は)検認手続で開封します。

(2) 遺言執行者
① 遺言執行者の必要性
遺言内容によって執行が必要なものと必要でないものがあります。
  
   必要なもの 認知、遺贈など   
    ← 遺言者に代わって、必要な事務処理を執行する者が必要となります。

   必要でないもの   相続分の指定など
       → 遺言それ自体が、相続分を指定してしまっているので、その遺言は執行が必要ありません。(ただし、具体的な遺産分割は、当事者で協議等して行う必要があります。)
          

② 遺言執行者となることのできる資格
自然人でも、法人でもなれます。
相続人がなれるかは、議論が有りますが、原則として可能とされています。
未成年者・破産者はなれません。
       
   遺言内容の実行を確実にするため、弁護士を遺言執行者として指定しておくことはよくあります。堅実なよい方法だと考えられます。  


③ 共同遺言執行者   遺言執行者が複数になる場合もあります。

④ 遺言執行者の指定・選任
(a) 遺言で、遺言執行者を指定することができます(1006条1項前段) →ただし、指定された者に諾否の自由があります。
(b) 遺言で、遺言執行者の選任を第三者に委託することができます。
(c) 遺言執行者がいない、欠けたとき
→ 利害関係人の請求(家裁への申立)によって、遺言執行者を選任することができます(1010条)。

⑤ 遺言執行者の対外的地位(相続人以外の第三者に対して、遺言執行者がどういう立場に立つか)
(a) 相続人の代理人という立場に立ちます。

  (b) 「相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の権利義務」について、包括的な権限を持ちます(1012条1項)。



⑥  遺言執行者がいる場合には、相続人は、「相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない」(1013条)とされています。

   要するに、相続財産の処分等は、遺言執行者に任せる必要があり、相続人が勝手に処分してはならないということです。

⑦ 遺言執行者と相続人の関係(内部関係)
 
   これは、「委任」類似の関係とされています。
但し、民法の定める本来の「委任」と違って
  ・ 報酬は、家裁が定めることが出来る。
・ 自由に解任・辞任できない(家裁が関与。「正当な事由」が必要。)
  という特徴があります。

文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
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by hideki1975da | 2012-02-20 17:09

第18回 遺言(2)~遺言能力、有効・無効、撤回など

 今回は、遺言をする能力、遺言が無効になるのはどんな場合か、などについておはなしします。


1 遺言能力

 遺言をするのは多くの場合、高齢の方です。たとえば、認知症が進行している方が遺言をされることが可能なのでしょうか。
    
① 制限能力制度の不適用(民法962条)

遺言については、民法一般の行為能力と異なる規定が定められています。

たとえば、民法一般では20歳で成年となり行為能力があるということになります(逆に、20歳未満は未成年者であり行為能力が制限されていることになります)が、遺言の場合は、15歳に達しておれば遺言することができます。(民法961条)

② 成年被後見人の遺言についての制限

成年被後見人(成年後見制度の適用を受けている人)の場合は、次のように定められています。

本心に復しているときに、かつ、医師2人以上の立会いのもとに、おこなわなければならない(民法973条) 

  なので、一定の条件を満たせば、成年被後見人でも遺言は出来るということです。


 また、後見人(及びその配偶者、直系卑属)の利益になる遺言については、原則として無効とされており(民法966条1項)、例外として、後見人が被後見人の直系血族、配偶者または兄弟姉妹である場合は有効(同条2項)とされています。
  「被後見人が後見人の食い物にされないように」という配慮から出た規定ですが、一定の親族の場合の例外があるので、中途半端な規定になっているとの批判もあります。 

③ 意思能力のない者の遺言は無効となります。
  「自らがした遺言の意味を理解出来る能力」が必要です。
  従って、認知症があったとしても、自分のした遺言の意味を理解できる能力があるならば、有効な遺言が出来ますが、重度の認知症でそれすら理解できないと言う場合には、遺言をしても「意思能力がないので無効」となります。

2  遺言の効力

 ① 民法総則の無効・取消事由

意思無能力による無効と公序良俗違反による無効を除き、遺言中の身分上の事項(認知など)には適用されず、財産上の事項にのみ適用されるとされています。

  ↑ ここは少しややこしいので、法律を勉強している人以外のかたは、とりあえず気にしなくてもかまいません。

② 遺言の効力発生時期
 (a) 原則として、遺言者の死亡時が効力発生時期です。
(b) 例外として、もし遺言事項について停止条件がつけられていた場合(「息子が大学に入学したときは」などが停止条件)には、条件成就(例 大学入学)の時から効力を生じる

3 遺言の撤回

① 遺言撤回の自由(民法1022条)
 遺言は一度つくったとしても、その人の生存中は、いつでも何度でも撤回できます。
 それは、遺言は、表意者(遺言する人)の最終意思の反映だから、です。

② 撤回の意思表示の方法
 「遺言の方式に従って」行わなければならない(1022条)とされています。
 内容証明郵便等では撤回できません。
   つまり、前にした遺言を撤回するときにも、また改めて遺言を作って「撤回する」ということを書かなければならない、ということです。


③ 撤回擬制  ※「擬制」とは、「みなす」という意味です。
 
   次の場合は遺言が撤回されたものとみなされます。

  (a)  前後の遺言が内容的に抵触する場合(抵触遺言。1023条1項。)

【参考図書に掲載されているケース】
Aは旧遺言で「甲土地をHに譲る」と書いていたのを,新遺言を作成した際に「甲土地をGに譲る」と書いた。


   → 甲土地の遺贈について、新遺言で旧遺言と違うこと(抵触すること)をかいたので、Aさんの「最終」意思は旧遺言と違うことがはっきりしました。そこで、旧遺言は撤回されたものとみなされます。

(b)  遺言の内容と、その後の生前処分とが抵触する場合(1023条2項)

これは、たとえば、遺言で「自分の死後、甲土地をHに譲る」と書いたのだけれども、その後に、生きている間に甲土地を他人に譲ってしまった場合などです。
    この場合も、遺言した人の「最終」意思は、遺言に書かれたことと違うことがはっきりしていますので、遺言は撤回されたものとみなされます。


(c)  遺言者が故意に遺言書または遺贈目的物を破棄した場合(1024条)
    これも、故意に遺言書などを破棄する行為から、遺言者の「最終」意思が遺言と違う、ということと考え、遺言は撤回されたものとみなされます。


④ 撤回遺言の撤回


[原則]撤回遺言を撤回しても、旧遺言が復活することはない(1025条本文)とされています。

  撤回の撤回・・・「やめるのをやめた」というややこしい話ですが、次のケースのような場合です。

【参考図書にあるケース】
Aは,1999年8月1日に自筆証書遺言を
書き,「甲土地を長男Xに譲る」と記した。
その後,Aは,考えを変え,(この遺言を
破棄すればよかったものの,この所在を
失念したため)2000年12月31日に別の
自筆証書遺言を書き,「1999年8月1日に
私が書いた遺言は,すべてなかったことに
する」と記した。さらにその後,Aは,さ
らに再考し,2002年1月1日に,「2000年
12月31日に書いた遺言は,なかったことに
する」と記した。


※ この場合では、1999年の遺言も2000年の遺言もなかったことなります。
  2000年の遺言が撤回されたからと言っても、一旦撤回された1999年の遺言が「復活」することはありません。



[例外1]但し、あらためて旧遺言の通りにする意思を表明する遺言をしたときは、旧遺言が有効になる(最高裁判例H9.11.13)。

 これは、撤回遺言を撤回する、と書いただけでなく、もともとの遺言のとおりにすることを明記した場合です。


【参考図書に掲載されているケース】
Aは,1999年8月15日に自筆証書遺言を書き,「甲土地を長男Xに譲る」と記した。
その後,Aは,考えを変え,(この遺言を破棄すればよかったものの,この所在を失念したため)2000年12月31日に別の自筆証書遺言を書き,「1999年8月15日に私が書いた遺言は,すべてなかったことにする」と記した。
さらにその後,Aは,さらに再考し,2002年1月1日に,「2000年12月31日に書いた遺言はなかったことにして,1999年8月15日に書いた遺言をもとどおりに認める」と記した。


※ この場合は、下線部をあえて書いたことによって、1999年遺言の効力が復活します。


[例外2]また、遺言の撤回が詐欺又は脅迫によるものであった場合にも、旧遺言は復活する(1025条但書)。


【参考図書に掲載されているケース】
Aは,1999年1月1日に,「甲土地をD社に遺贈する」との自筆証書遺言を書いたが,このことを知った子Xから遺言を書き直すようにせまられて暴行を加えられ,2000年12月31日に,「甲土地をXに譲る」との自筆証書遺言を書いた(Xについては,この行為が相続欠格事由に該当する点に注意が必要である[891条4号])。


※ この場合も、1999年遺言は民法1025条但書の定めにより、復活します。

文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
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by hideki1975da | 2012-02-08 18:02


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