第26回 遺留分(4)~遺留分減殺請求

 今回は、法律上は遺留分があるとして、遺留分を持っている人は実際にはどのように権利を行使するのか?ということを解説します。


(1) 遺留分減殺請求権
① 遺言などによって遺留分が侵害されていることがあっても、そのままでは侵害行為(遺贈など)が無効になるわけではありません。

そこで、遺留分を侵害されている人は、遺留分減殺請求権を行使します。

  「減殺(げんさい)」というのは、遺留分を侵害する行為(遺贈や贈与など)について、全部又は一部の効果を無くすということです。

   そうしてはじめて、財産の取り戻しができる、というわけです。
  ↓            
(遺留分減殺請求権を行使すれば、効果として)
遺留分減殺請求権の範囲で、(遺留分を侵害していた)贈与・遺贈が効力を失います。
   そして、個別的遺留分に相当する財産権が、遺留分権利者に帰属していたものして扱われるようになります。
   少し分かりにくい言い方ですが、要するに「遺留分の分だけ財産が取り戻される」ということです。

② 具体例
【参考図書に挙げられているケース】
Aが死亡し,相続人は子X・Yである。
 Aは,死亡する6か月前に甲土地をYに贈与し,所有権移転登記を終ていた。ここにおいて,Xが遺留分減殺の意思表示をし,甲土地につきYに対して,自己への4分の1の共有持分移転登記をするように求めた。


  → この場合、遺留分減殺請求権行使の結果、Xには4分の1の共有持分(=物権)があることになります。


(2) 遺留分減殺請求権者
① 遺留分権利者およびその承継人

   遺留分権利者は、民法1028条により、「兄弟姉妹以外の相続人」であると定められています。

その承継人とは、遺留分権利者の相続人(遺留分権利者も亡くなってしまった場合)・包括受遺者などのことです。

② 遺留分権利者の債権者が遺留分減殺請求権を代位行使できるか?

【少し難しい論点です。関心のない人は飛ばして下さい。】

(判例・通説)
債権者が遺留分減殺請求権の行使をすることを否定する。
∵ 民法は侵害された遺留分を回復するかどうかを遺留分権利者自律的決定に委ねている。


(3) 遺留分減殺の方法
意思表示によります。
 必ずしも、訴えの方法による必要はありません。通常は、内容証明郵便等を送付して行います。

  意思表示により、「物権的効力」と言って、取り戻し財産は減殺請求権者の固有財産になる、という効力が発生します。
 

(4) 減殺の限度
遺留分を保全するのに必要な限度で減殺できることになります。
  具体的には以下の計算によります。

 = 【個別的遺留分額】-(【遺留分減殺請求権者が得た特別受益】+【遺留分減殺請求権者が実際に相続した額】)

(5) 減殺対象となる行為と減殺の順序
① 減殺対象となる行為
遺贈
 +
1030条 一定範囲の贈与

② 減殺の順序1 - 贈与と遺贈
  まず遺贈から。
  それでも足りないときにはじめて贈与。

【参考図書に挙げられているケース】
Aには妻Wと子X・Yがいる。
 Aは,40年前にYが婚姻する際の持参金として500万円を渡し(相続開始時点での評価額は3,000万円),また,公正証書遺言で「甲土地を弟Dに譲る」と記した(相続開始時点での評価額1,000万円)。
Aが死亡し,甲土地を除く遺産総額は2,000万円であった。



 このケースでは、

具体的相続分  W:X:Y=2:1:0(Yは超過特別受益を受けている。
相続財産2000万円に対しては、
W 1334万円    ※1
X  667万円    ※2
Y    0円

個別的遺留分

基礎財産

 2000万円  +  1000万円    +   3000万円

現存財産(金)     現存財産(土地)        贈与

=6000万円



総体的遺留分 は 基礎財産の(1/2)

個別的遺留分の割合及び額は  
   W 割合( 1/4 ) 額( 1500万 )円  ※3
   X 割合( 1/8 ) 額(  750万 )円  ※4 
   Y 割合( 1/8 ) 額(  750万 )円
      
各自は遺留分を害されているか?

 遺留分を害されている人は、WとXです。Yさんは、既に3000万円相当の贈与を受けています。
             

 害されている金額は、

   W   ※1と※3の差   166万円
   X   ※2と※4の差    83万円     


 その結果、WとXが、遺留分減殺請求権を行使できることになります。

まず、Dに対して権利行使をして、財産を取り戻そうとすべきということになります。(上で説明したとおり、遺贈と贈与が両方ある場合は、遺贈から先に遺留分減殺すべきだからです。)
 
 それでもし足りなければYに対して遺留分減殺請求することになります。

 ③ 減殺の順序2-遺贈の減殺
遺贈が数個ある場合
→ 遺言者が遺留分減殺の順序を指定した場合は、それに従います。
      それがない場合は、減殺額を「遺贈の目的の価額」の割合に応じて割り付けます。

【参考図書に挙げられているケース】
Aには,妻Wと子X・Yがいる。
 Aは,「自分の遺産から5,000万円をD宗教法人に寄付し,2,000万円K市に寄付し,残りを相続人らで分配せよ」との公正証書遺言を残し死亡した。Aにはめぼしい残余財産がなかったため,W・X・Yすべの相続人の遺留分が侵害されていることが判明した。


 このケース それぞれの個別的遺留分
W  1/4   1750万円           
X  1/8    875万円
Y  1/8    875万円

 減殺対象となる2つの遺贈の価額割合(5:2)で支払いを求る。
対D          対K
W     1250万円       500万円
 
  X      625万円       250万円

Y      625万円       250万円

④ 減殺の順序3-贈与の減殺
数個の贈与の減殺は、次のような順序で行います。
  相続開始時に近いものから減殺し、順次に遠いものを減殺する(民法1035条)。    同時の贈与については、贈与財産の価額に応じて減殺する。
  
(6) 減殺請求の相手方
減殺対象である処分行為により直接に利益を得た受遺者・受贈者、その包承継人(相続人など)及び悪意の特定承継人を相手に遺留分減殺請求することになります。

文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
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by hideki1975da | 2012-03-21 19:28


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