第21回 遺言(5)~公正証書遺言など

 今回は、遺言のうち、公正証書遺言と秘密証書遺言について御説明します。


1 公正証書とは
遺言者が遺言の内容を公証人に伝え、公証人がこれを筆記して公正証書による遺言書を作成する方式の遺言(969条)です。

 公正証書遺言にするメリットは、自筆証書遺言と違って、方式不備によって無効になる恐れがほとんどないことです。というのは、素人が自分で遺言書を作成するのではなく、公証人が要式に従って作成するものだからです。
 また、遺言そのものを公証役場で保管してもらえることや、検認手続がいらないこともメリットにあげられます。

ただし、公証人に支払う手数料が必要になります。

2 公正証書遺言の方式要件は次の通りです。

(a) 証人2人以上の立会いがあること
(b) 遺言者が遺言の趣旨を公証人に「口授」すること
(c) 公証人が、遺言者の「口授」を筆記すること
(d) 公証人が、遺言者及び証人に、読み聞かせ又は閲覧させること
(e) 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと
(f) 公証人が、その証書は以上の方式に従って作ったものである旨を付記して、署名押印すること

3 「口授」と手話通訳、筆談  H11年の法改正
「口授」とは、遺言の内容を遺言者が公証人に直接に口頭で伝えることをいいます。

法改正以前は、口のきけない者が排除されているという問題がありました。

H11年の法改正で(「口がきけない者」や「耳の聞こえない者」について)「口授」「読み聞かせ」について、手話通訳や筆談の方法が取れるようになりました。 
 バリアフリーが進んだわけです。

4 「口授」の順序
(a) 民法が本来予定している「口授」のイメージは次のようなものだと思われます。
Ⅰ 遺言者→公証人 口頭
Ⅱ 公証人 筆記
Ⅲ 読み聞かせ
Ⅳ 関係者承認、署名押印

(b) ただし、 判例は、上記の順序だけでなく、もう少し緩やかに解している。

 たとえば、公証人が、遺言をしようとしている人から希望する内容を聴き取って、公証人が文案を作成して「これでよいか」と尋ね、遺言者が「これでよい」と答え、関係者が署名押印して作成する、というものも有効であるとされています。



(c) しかし次のような場合は、「口授」の要件を満たさないとしています。無効になります。

・ 言語をもって陳述することなく、たんに肯定または否定の挙動を示したに過ぎない場合。
 ・ ただうなづくのみの場合。

4  証人・立会人の欠格事由

  公正証書には、証人2人以上の立会いが必要とされていますが、次のような人は証人になれません。
(a) 未成年者
(b) (遺言作成時の)推定相続人・受遺者、ならびに、これらの者の配偶者・直系血族
(c) 公証人の配偶者、4親等内の親族、書記および使用人

ここに挙げられた欠格者が証人として立ち会って行われた公正証書遺言は、原則として無効です。
  ここに挙げられていない人(たとえば、遺言文章作成に関わった弁護士や弁護士事務所事務員など)は証人になるこができます。
     

5 秘密証書遺言
① 秘密証書遺言とは
 
 遺言者が遺言内容を秘密にしたうで遺言書を作成したうえで、封印をした遺言証書の存在を明らかにする-しかも、この過程に公証人を関与させる-ことを目的として行われる遺言(970条)です。
             
メリットは次のようなことです。  
   1) 自書能力がなくても遺言書を作成できる(ワープロ可、他人に書いてもらうことも可)
2) 遺言書の「存在」は明らかに出来る(死後に発見されないとか、隠匿・廃棄される危険は小)
3) 遺言の「内容」は秘密にできる

デメリットは次のようなことです。
   1) 遺言をした事実は明らかになってしまう
2) 遺言書作成の費用がかかる
3) 無効になるおそれは公正証書よりは大きい
4) (公正証書と違って)裁判所の検認は必要

② 方式要件は次のとおりです。
(a) 遺言者が遺言内容の記載された証書に、署名し、印を押すこと(970条1項1号)
内容は自書の必要はありません。ワープロ、点字機、他人に書いてもらうというのもOKです。
(b) 遺言者がその証書を封じ、証書に用いた印章を用いて、これに封印をすること(同条1項2号。封紙への封印。)

(c) 遺言者が、公証人1人および証人2人以上の前に封書を提出して、事故の遺言書である旨と、その筆者の住所・氏名を「申述」すること(同条1項3号)



6  特別方式の遺言の各種  (参考までに)

  ※ 普通の遺言ができない緊急事態にだけ行える特別な方式の遺言があります。船などに乗っていて遭難した場合に急遽遺言を作る必要があるなどの場合です。

[特殊性]
「普通の方式」(自筆証書、公正証書、秘密証書)によって、遺言をすることにができるようになった時から6か月生存するときに、当然に失効する(983条)。

危急時遺言          一般危急時遺言 976条
                 船舶遭難者遺言 979条

  隔絶時遺言          伝染病隔離者遺言 977条
                 在船者遺言    978条      

          
文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
by hideki1975da | 2012-02-23 18:22


誰にでもわかる平たい言葉で、相続法を解説するブログです。 神戸シーサイド法律事務所所属 弁護士村上英樹


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