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第13回 特別受益

さて、 前回お話しした「法定相続分」(民法により決まっている割合)に修正を加えて、具体的相続分が決まります。
 ここでいう「修正」とは、「特別受益」と「寄与分」というものです。
 今回は、「特別受益」についてお話しします。


① 特別受益とは 民法903条
  ある相続人が、被相続人から受けた 
            
                遺贈

                又は
     
     (婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本としての)贈与

  のことを言います。

   遺産の前渡しのような性格と理解されています。

「特別受益」がある場合の処理は、相続を行う時点で現存する遺産に対して、特別受益を持ち戻した上で  の計算を行う、ということになります。
   わかりにくいかもしれませんが、現にある遺産に加えて、特別受益の分も「あるとみなして」計算をし直すということです。具体例は、以下にあげます。
 

② 特別受益にあたるかどうか問題になるもの
  
   大学学費、生命保険金、死亡保険金など

③ 処理方法

(a) みなし相続財産の算定

 相続人の中に特別受益を受けた者がいるときは、まず、特別受益(贈与)分を相続財産額に加算して    「みなし相続財産」とし(持ち戻し)たうえで、各共同相続人の相続分(一応の相続分)を確定します。

贈与を持ち戻す場合、加算すべき贈与の価額は、相続開始時の現状で評価します(基準時-相続開始時)。

【ケース】 

たとえば、Aが死亡し、Aの相続について。
相続人は複数いるが、その1人であるXは,Aから30年前に土地を生前贈与されていた。
その土地は当時の価額では100万円相当であったが,現時点での評価額は2,000万円である。
     
  ★ この場合は、特別受益を考慮する際、100万円を基準とするのではなく、現在の評価額2000万円を基準とする。

       

(b) 具体的計算例

【ケース】 ※ 弘文堂「相続法 第3版」潮見佳男著より引用
Aが死亡し,相続人は,妻W,子X・Y・Zである。
遺産は2億1,000万円。Xは生前に500万円の贈与を受けている(相続時に換算すると,3,000万円)。また,Aは,遺言で2,000万円をWに遺贈している。

    【この場合の計算】

Ⅰ まず、贈与を持ち戻す  → 「みなし相続財産」を計算する。

2億1000万円(現にある遺産) + 3000万円(特別受益の分)
              = 2億4000万円

★ Wへの遺贈の分は、2億1000万円に元々含まれています。

Ⅱ これに法定相続分をかける。これが「一応の相続分」

W 2億4000万円 ×1/2    =1億2000万円

X 2億4000万円 ×1/6 =  4000万円

Y 2億4000万円 ×1/6 =  4000万円
       
       Z 2億4000万円 ×1/6 =  4000万円

       ★ これが、各人が、本来相続すべき金額、という考え方になります。
         次のⅢで、ここから、既にもらっている部分を差し引くという計算をします。

Ⅲ 次に特別受益を控除する。

X (贈与を控除) 
4000万円-3000万円 = 1000万円

       W (遺贈を控除)
           1億2000万円-2000万円 = 1億円

  ★ X,Wは、既にもらっている部分や、別途遺贈される部分があるので、残りは、それぞれ上記の金額である、という考え方です。
     Y,Zには特別受益はないので、Ⅱの計算のままで、それぞれ、4000万円です。


Ⅳ 遺産から、遺贈を別に取り分ける。(今後、分割すべき金銭の計算です。)

2億1000万円-2000万円=1億9000万円

Ⅴ その結果、遺贈を除いた遺産1億9000万円は、次のような割合(具体的相続分)で、各共同相続      人に分配されることになる。

   W:X:Y:Z= 1億円 : 1000万円 : 4000万円 :4000万円    

       ★ Ⅲまでで出した、各人が取得すべき金額の割合です。

(c) 超過特別受益者がいる場合
  
   ある相続人について、一応の相続分から具体的相続分を控除した結果がゼロまたはマイナスになる場合はどうなるでしょうか。
   
   つまり、特別受益を考慮すると、他の相続人との比較上、既に「もらいすぎ」の状態になっている場合などです。
この場合、「もらいすぎ」の相続人は、相続財産から現実に取得する金額はない(903条2項)ことになります。つまり、「それ以上もらえない」のです。
しかし、「もらいすぎた」分を返さなければならないか、というとその必要はないとされています。

他の共同相続人の具体的相続分の算定については、通常の場合よりやや複雑になります(今回は割愛します)。

④ 持ち戻しの免除
 被相続人は持ち戻しの免除の意思表示をすることができます(903条3項)。
  つまり、自分の財産を相続人の誰かに贈与して、「その贈与について、相続の際に、特別受益として持ち戻し計算をしないように」という意思表示です。
  こうしておけば、贈与があったとしても、それを「戻して」相続の計算をしないでよいことになり、贈与を受けた人の利得は贈与した人の死後まで確保できるということになります。




 文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
by hideki1975da | 2011-10-12 14:10


誰にでもわかる平たい言葉で、相続法を解説するブログです。 神戸シーサイド法律事務所所属 弁護士村上英樹


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