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第14回 寄与分

 今回は、「寄与分」について解説します。
 「寄与分」は、「特別受益」とともに、具体的相続分を決める際に考慮に入れられる要素のひとつです。

① 意義
(a) 寄与分の意義
共同相続人の中に、被相続人の財産の維持・形成に特別の寄与をした者がいた場合に、この特別の寄与を考慮し、この者に対して特別に与えられる相続財産への持分のことを言います。

      言いかえると、相続人の誰かが、故人の財産を増やす(あるいは維持する)ことに特別に貢献した場合に、そのことを評価して、その貢献に対して与えられる分け前のことです。

参考文献(弘文堂「相続法 第三版」潮見佳男著)に挙げられているのは、次の通りです。
【ケース1】
農業・畜産業を営んでいるAには,X・Y・Z3人の子がいる。
このうち,Xは,会社勤めのかたわら,高齢のAを助けて農作業に従事し,農地の維持と経営規模の拡張に多大の貢献をしてきた。その後にAが死亡した(家業従事型)。

【ケース2】
会社を定年退職したAには,妻Wのほか,子X・Y・Zがいる。
3人の子は,いずれも独立している。Aは40年前に購入した住宅に住んでいるが,建物が老朽化したため,全面的に改修することにした。その際に,Xは,Aに改修資金として400万円を援助した。その後に,Aが死亡した(財産出資型)。

【ケース3】
85歳のAには,X・Y・Z3人の子がいる。
このうち,Xは,Y・Zが見放した認知障害の進んだAを引き取って介護し,つきっきりで入退院の付添いや日常の世話をしてきた。その後に,Aが死亡した(療養看護型)。

【ケース4】
70歳の非常勤の会社役員Aは,妻に先立たれて以降は独居生活を送ってきた。
Aは現在のところ健康そのものであるが,将来の不安を感じ,3人の子X・Y・Zのうち,X宅に同居し,「離れ」の建物を借りて生活をおこなうことにした。Aは,Xに対して生活費を入れていない。
日常の生活については,Xの家族が一切の世話をし,10年を経過した。そのAが死亡した(扶養型)。


(b)  寄与分はどのように計算されるか?


  寄与分は、「みなし相続財産」確定にあたり、現存する相続財産の額からこれを控除することによって算定される(民904条の2)と規定されています。

 具体的にはどうするのでしょう。例を挙げて説明します。
 ※ 以下の計算では、前回(第13回 特別受益)ででてきた贈与などの持ち戻し計算が含まれているので、複雑になります。ややこしければ、まあそんなものか、という感じで読み流して頂いて結構です。

【ケース5】
Aが死亡し,妻W,子X・Y・Zが相続人である。
遺産は2億3,000万円。Xは生前に500万円の生前贈与を受けている(相続時に換算すると,3,000万円)。また,Aは,遺言で2,000万円をYに遺贈している。妻Wには2,000万円の寄与分が認められるとする。


Ⅰ みなし相続財産の計算

  贈与を持ち戻す
寄与分を控除する
(遺贈された2000万円は遺産2億3000万円中に含まれている…ここでは計算操作しない)

2億3000万円 + 3000万円 - 2000万円  
                       贈与         寄与分
 = 2億4000万円


Ⅱ 各共同相続人に割り付け(法定相続分で)「一応の相続分」

W 2億4000万円 ×1/2=1億2000万円

X 2億4000万×1/6  =   4000万円

Y 2億4000万×1/6  =   4000万円

Z 2億4000万×1/6  =   4000万円


Ⅲ 特別受益の控除 と 寄与分 の加算

X 贈与を控除  
 4000万円-3000万円
           =1000万円

Y 遺贈を控除
 4000万円-2000万円
 =2000万円

W 寄与分を加算
   1億2000万円2000万円
           =1億4000万円
  
Ⅳ 遺産から遺贈を取り除く。

  2億3000万円-2000万円=2億1000万円

Ⅴ その結果、遺贈を除いた遺産2億1000万円は、次のような割合(具体的相続分)で、各共同相続人に分けられる。

W:X:Y:Z=1億4000万:1000万:2000万:4000万    
 
② 寄与の態様
(a) 「被相続人の財産の維持・増加」への寄与が必要です。
      あくまで、財産の維持増加に貢献していなければなりませんので、単なる精神的支援のようなことでは認められません。

(b) 特別の寄与が必要です。

     Ⅰ 親の介護などの場合

  介護等をすること自体は、直系血族の扶養義務(民877条1項)として、法律上義務とされているものがあります。そういった法律上の義務の範囲内か、それとも、その程度を越えるような特別のものなのかが問題になります。
 特別の寄与であるということでなければ、寄与分は認められません。

Ⅱ 寄与行為は無償のものでなければなりません。

Ⅲ 寄与行為と被相続人の財産の維持・増加との因果関係が必要です(寄与行為があったことと財産の維持・増加との間に繋がりがあることが必要です)。

③ 寄与分の決定

    寄与分は、寄与の時期・方法・程度、相続財産の額その他一切の事情を斟酌して決定されます。

まずは共同相続人の 協議(ⅰ) で、協議が整わないときは家事調停(ⅱ)、調停不成立の場合には家庭裁判所の審判(ⅲ)で決定されることになります。


 文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
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by hideki1975da | 2011-12-22 17:26


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