第16回 遺産分割(2)
前回、遺産分割について、
協議
調停
審判
の3つの方法がある、ということを御説明しました。
今回は、それぞれについて説明します。
1 協議分割
まずは、話し合いによって遺産分割をするのが基本です。
共同相続人の合意による遺産分割方法です。
法定相続分や遺言による分割方法の指定と異なる内容での分割も、相続人同士の話し合いがまとまれば可能です。
2 調停分割
協議分割ができないときは、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
調停を申し立てずに、いきなり審判を行うように申し立てることも法律上は一応可能ですが、まずは調停を行うのが原則です。
調停分割においては、遺産分割の当事者は、全員が申立人または相手方にならなければなりません(つまり、3人兄妹が共同相続人であるときに、うち2人だけで調停をするということはできないのです。あくまで3人でやらなければなりません)。
調停の順序は、だいたい次の通りです。
① 相続人の範囲の確定 誰が相続人になるのか?
② 遺言の有無の確定
③ 一応の相続分の確定
④ 遺産の範囲を確定 どの財産が遺産に入るのか?
⑤ 遺産の評価 不動産などは何円と評価するのか?
⑥ 特別受益の有無の確定 誰かが特に被相続人から優遇されてもらったものなどがあるか?
⑦ 寄与分の有無の確定 誰かが遺産を増やすために特別の貢献をしたか?
⑧ 相続開始時の具体的相続分率を確定
⑨ 具体的相続分率をもとに、遺産分割時における各自の取得分額を算定
⑩ 遺産分割方法の決定 具体的に、何をどうわけるか?
3 審判分割
(1) 協議が整わないときなど → 各共同相続人は家裁に審判を請求できます
調停(家裁)が成立しないとき → 審判に移行します。
(2) 遺産相続の審判は、相続開始地(被相続人の最後の住所地)の家裁で行います。
(3) 相続分に従った分割
審判では、法の定めに従って計算された相続分に従った分割がなされます。
(4) 原則として現物分割をします。しかし、分割が不可能又は不適切な場合には、価額分割、代償分割等の方法をとることがあります。
4 遺言による遺産分割方法の指定
(1) 遺言により「分割方法が指定」されているものは、遺言に従って分割します。
この場合でも、実際に分割するには、遺産分割手続(協議、調停、審判)を行う必要があります。
(2) 「相続させる」遺言
【参考図書より引用 ケース】
Aは,公正証書遺言で,「甲土地を長男Xに相続させる」との一文を残して死亡した。相続人は,妻Wと子X・Yである。
「相続させる」とはどういう意味でしょうか?「遺贈」するということでしょうか?「遺産分割の方法を指定した」ということでしょうか?
判例(最高裁.平成3年)によれば、「相続させる」と書いた遺言は、
・ 遺産分割の方法を指定した遺言である
・ 原則として、何らの行為も要せずに、被相続人の死亡時に直ちにその遺産が当該「特定の相続人」に承継される。
とのことであり、こういう遺言も有効です。
(以前は、「遺贈」をするよりも「遺産分割方法の指定」をするほうが、登記に必要な登録手数料が安く上がったということから、「相続させる」の意味が活発に論じられたのですが、2003年(平成15年)から登録免許税法が改正され、相続による登記の場合でも遺贈による登記の場合でも同一の税率となったため、登録手数料に関してはこの議論は意味が無くなっています。)
文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所)
協議
調停
審判
の3つの方法がある、ということを御説明しました。
今回は、それぞれについて説明します。
1 協議分割
まずは、話し合いによって遺産分割をするのが基本です。
共同相続人の合意による遺産分割方法です。
法定相続分や遺言による分割方法の指定と異なる内容での分割も、相続人同士の話し合いがまとまれば可能です。
2 調停分割
協議分割ができないときは、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
調停を申し立てずに、いきなり審判を行うように申し立てることも法律上は一応可能ですが、まずは調停を行うのが原則です。
調停分割においては、遺産分割の当事者は、全員が申立人または相手方にならなければなりません(つまり、3人兄妹が共同相続人であるときに、うち2人だけで調停をするということはできないのです。あくまで3人でやらなければなりません)。
調停の順序は、だいたい次の通りです。
① 相続人の範囲の確定 誰が相続人になるのか?
② 遺言の有無の確定
③ 一応の相続分の確定
④ 遺産の範囲を確定 どの財産が遺産に入るのか?
⑤ 遺産の評価 不動産などは何円と評価するのか?
⑥ 特別受益の有無の確定 誰かが特に被相続人から優遇されてもらったものなどがあるか?
⑦ 寄与分の有無の確定 誰かが遺産を増やすために特別の貢献をしたか?
⑧ 相続開始時の具体的相続分率を確定
⑨ 具体的相続分率をもとに、遺産分割時における各自の取得分額を算定
⑩ 遺産分割方法の決定 具体的に、何をどうわけるか?
3 審判分割
(1) 協議が整わないときなど → 各共同相続人は家裁に審判を請求できます
調停(家裁)が成立しないとき → 審判に移行します。
(2) 遺産相続の審判は、相続開始地(被相続人の最後の住所地)の家裁で行います。
(3) 相続分に従った分割
審判では、法の定めに従って計算された相続分に従った分割がなされます。
(4) 原則として現物分割をします。しかし、分割が不可能又は不適切な場合には、価額分割、代償分割等の方法をとることがあります。
4 遺言による遺産分割方法の指定
(1) 遺言により「分割方法が指定」されているものは、遺言に従って分割します。
この場合でも、実際に分割するには、遺産分割手続(協議、調停、審判)を行う必要があります。
(2) 「相続させる」遺言
【参考図書より引用 ケース】
Aは,公正証書遺言で,「甲土地を長男Xに相続させる」との一文を残して死亡した。相続人は,妻Wと子X・Yである。
「相続させる」とはどういう意味でしょうか?「遺贈」するということでしょうか?「遺産分割の方法を指定した」ということでしょうか?
判例(最高裁.平成3年)によれば、「相続させる」と書いた遺言は、
・ 遺産分割の方法を指定した遺言である
・ 原則として、何らの行為も要せずに、被相続人の死亡時に直ちにその遺産が当該「特定の相続人」に承継される。
とのことであり、こういう遺言も有効です。
(以前は、「遺贈」をするよりも「遺産分割方法の指定」をするほうが、登記に必要な登録手数料が安く上がったということから、「相続させる」の意味が活発に論じられたのですが、2003年(平成15年)から登録免許税法が改正され、相続による登記の場合でも遺贈による登記の場合でも同一の税率となったため、登録手数料に関してはこの議論は意味が無くなっています。)
文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所)
by hideki1975da
| 2012-01-16 16:02
誰にでもわかる平たい言葉で、相続法を解説するブログです。 神戸シーサイド法律事務所所属 弁護士村上英樹
by hideki1975da
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