第15回 遺産分割(1)

1 遺産分割とは

  相続が発生する(被相続人が死亡する)と、その瞬間から、相続分の割合で、各相続人は遺産を共有します。例えば、父が死亡し、妻と子2人の場合は、妻1/2、子それぞれ1/4などの割合で「共有」となるのです。
 しかし、この遺産共有状態は、あくまでも一時的なものです。
 それぞれの遺産(例えば、A土地、B建物など)が、最終的に誰のものになるのか、ということは、「遺産分割」をして決めなければなりません。
 
遺産共有   →   遺産分割

2 遺産分割の方法
(1) 手続

協議、調停、審判があります。
  まずは、お互いの話し合い(協議)をやって、それが整わないとき、家庭裁判所に調停又は審判を申し立てることになります。

(2) 分割方法
  
 単純な現物分割(たとえば、「遺産中のA土地を半分ずつに分割して、2人の相続人が取得する。」と言う場合や、「遺産中の不動産については長男、金融資産については次男が取得する。」という場合など。)

というほかに、 

 換価分割(遺産中のA土地を売却して、その代金を相続人が分ける)

 代償分割(遺産中にある土地建物について、長男が取得した上で、次男に対して代償金を支払うことにする)

 全面的価格賠償による分割(解説省略)

などがあります。

 相続人それぞれの事情(建物に住む必要、金銭を用意できる状況かどうかなど)に応じて、適した方法をとるということが原則になります。   

3 遺産分割の対象

遺産分割時の(に存在している)相続財産を対象にします。


4 遺産分割の当事者
  
 次の通りです。

(1) 共同相続人・包括受遺者・相続分譲受人

(2) 遺言執行者

(3) 不在者が居る場合
  
  利害関係人(他の相続人など)が、家庭裁判所に対し、不在者財産管理人の選任を請求して、不在者財産管理人をたててもらい、その不在者財産管理人を当事者として、遺産分割の手続を行います。

(4) 胎児がいる場合
出生を待って遺産分割を行います。出生したら(5)「未成年者」の項目記載のとおりになります。


(5) 未成年者(など制限行為能力者)がいる場合
親権者が法定代理人となります。
しかし、そうなると、親権者と子とが両方とも相続人である場合にややこしい問題が生じます。
   
  つまり、親権者が、自分と子との両方の立場で遺産分割をしなければならない事態になり、こういう場合を「利益相反」にあたるといいます。(子と親との利害が相反する=対立するということです。)
 
  たとえば、父が死亡した場合の相続では、母子とも相続人となります。

  そのような場合は、母が子を代理していては「利害相反」となり、悪い見方をすれば、母が子の利益を犠牲にして自分の利益を図ることも可能になりますから、そのままでは問題があります。

  そこで、「利害相反」になる場合には、親権者(法定代理人)のほかに、特別代理人を選任する必要があり、この場合は、親権者ではなく、特別代理人が未成年者の代理として遺産分割の手続に参加します。

成年後見人と成年被後見人(本人)が共同相続人となる場合も同様のことがあります。

5 遺産分割の時期
(1) 分割請求の自由
原則 各相続人は、いつでも自由に遺産分割請求できることになっています。

 (2) 分割禁止(例外)
① 遺言による一定期間の分割禁止
「自分の死後、遺産を4年間、分割してはならない」遺言などがある場合は、それに従います。
  5年以内ならば遺言で分割禁止とすることが可能(民908条)とされています。

② 協議・調停による分割禁止
  個別財産について、民法の共有の規定に基づき、5年を限度として分割禁止の契約・調停が可能とされています。

   ③ 審判による分割禁止
  家庭裁判所は特別の事由があるときに限り、期間を定めて遺産の全部または一部について分割の禁止をすることができるとされています(民法907条3項)。

6 遺産分割の効果
(1) 遺産分割の遡及効
  民法909条本文「遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。」とされています。
    この「さかのぼる」効果のことを「遡及効(そきゅうこう)」といいます。

【ケース】(参考文献より引用)
1995年5月10日にAが死亡し,妻Wと子X・Yが相続した。
協議が重ねられた結果,A死亡後5年を経てようやく,遺産のうちの甲土地についてはX,乙建物についてはY,現金はWが承継するものということになった。


  ★ この場合、2000年に遺産分割がなされたのですが、民法909条本文により、「遡及効(さかのぼる効果)」によって、1995年A死亡の時点から、甲土地はX、乙土地はY、現金はWの所有であったということになります。


(2) 「ただし、第三者の権利を害することはできない」(909条但書)

  上記の「遡及効(さかのぼる効果)」は、共同相続人同士の間では、別にそれで構わないかもしれません。
  しかし、たとえば、上記のケースで、甲土地がXYZの共有であるということを前提にして、誰かが持つ共有持分を買った人(取引関係に入った人)に迷惑が及ぶかもしれません。

  そこで、法律は、もし、上記のケースで、たとえば、第三者のSさんが、甲土地のZの共有持分を1998年(A死亡の後、遺産分割前)に譲り受け、登記をしていたとすれば、Sさんが譲り受けた共有持分の権利は保護するということにしています。

  この点は、すこしややこしい問題ですが、「遡及効」が共同相続人以外の(事情をよく知らないかも知れない)第三者に迷惑を及ぼさないように民法はバランスをとっている、という風に理解できます。

 文 弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
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by hideki1975da | 2012-01-12 15:10


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